第2章 中編 生贄の彼女と死の外科医
「……愛している…だと?……そんな言葉も、素振りも、まったく見せなかっただろうがっ!?」
ガンッ!!
ローは拳を扉に叩きつけた。
「なんで黙っていた!?おまえ1人が怖いって言ったよな!?何もかも全部1人で抱え込んで死ぬまでそこにいるつもりなのか!?ふざけるな!!!」
何度も何度も拳を叩きつけるローを妖精は静かに見ていた。
例え何をしても扉が開くことも、ユーリに言葉が届くこともないのに、ローの叫びは止まらなかった。
拳に血を滲ませ、何度も能力を発動させた。
「そんなにおれが頼れなかったのか!?おまえに縛られるなら寧ろ本望だってなぜ分からない!?」
ローは鬼哭で扉を何度も切り刻んだ。
鈍い音が響くばかりで、傷一つ付けることができない。
無駄だとわかってても、今のローを止めるものは誰もいなかった。
「勝手に人の幸せを決めてんじゃねェよ!!勝手に納得して傷ついておまえの幸せはどうなる!?」
ガッ!!!
ローは鬼哭が消えてしまうと額を扉に打ち付けた。
額からは血が流れていたが、ユーリの抱えている痛みに比べればこんなの痛いうちに入らなかった。