第1章 前編 時の彼女と死の外科医
「しかし荷物も全部燃えたし、どうすっかなぁ」
「何か大切な物でもあったのですか?」
ユーリの問いかけにシュライヤは別にたいしたものじゃないが、色々な連絡先の書いてある紙がなくなったのは少し困るようだった。
「…ホワイトホール」
ユーリは能力を発動し、ブラックホールで消した建物の中を探った。
そしてシュライヤの案内の元、奇跡的に燃えていなかった彼の荷物を取り出すことができたのだ。
「おまえまじですげぇな。ありがとう、助かったよ」
シュライヤは本当に嬉しそうに荷物を受け取った。
渡すときにチラッと見えた妹の写真に、大切なものがあるじゃないかとユーリは苦笑した。
そして能力を解除するとき痛みも伴ったが、どうも最近痛みが小さくなってる気がする。
それが何を意味するのかは分からないが、ユーリとしてはありがたかった。
「やっぱちゃんとお礼したいからさ、なんかないの?」
そして受け取った荷物を整理し終わると、シュライヤは再びユーリに聞いてきた。
この店に入った時スイーツを奢ってもらうことで一度納得してもらったが、やはり彼の気は収まらないようだった。
「…うーん」
ユーリは迷っていたが、実は1つだけあった。
しかしこの頼みを今日あったばかりの人に頼んでいいものか非常に迷っていたのだ。