第1章 前編 時の彼女と死の外科医
ユーリがため息を吐きひたすら歩いていると、突然周りが騒がしくなってきた。
何やら火事が起きたようで、残された子供を助けるため誰かが火の海に飛び込んだようだ。
ユーリは一瞬どうしようか迷ったが、すぐに建物に駆け寄り燃えていない壁に手を付けると、ブラックホールで燃えている建物すべてを消し去った。
そういえば刀でも消せたんだと思ったが、昨日から動揺しているユーリはまともに頭が働かなかった。
「な、なんだ?どうなったんだ?」
一瞬にして消えた炎と建物に周りがざわつき始める。
ユーリは目立ってはまずいと思い、その場を逃げるように後にした。
それから再び街中を適当に歩いていると、後ろから誰かが走ってきた。
ユーリは特に気にしなかったが、いきなり肩を掴まれたので、驚いて振り返った。
(…!?シュ、シュライヤ!?)
なんとユーリを引き留めたのは、あのシュライヤ・バスクードだったのだ。