第50章 NO DANCE NO LIVE!
「うん!安藤いいね!だんだん良くなってるよ!」
「ほっ、ほんと!?やった!」
「あとは決めるとこキメるのと、あと音楽を…」
「ふんふん……」
ダンス隊みんなでの練習。
今日は寮の外で行っていた。お茶子ちゃんと梅雨ちゃんと合わせて踊ってみたり、天哉くんの見事なロボットダンスに拍手をしたりする。みんなでワチャワチャと練習するのが楽しくて、嬉しい。
練習が始まって数日、私はみんなの中で踊っても浮かないくらいには上達してきていた。三奈ちゃんのアドバイスをしっかり聞いて、しっかり実践すればちゃんと上手くなるのだ。
「あ!通形先輩!」
「ん?」
出久くんの声に振り返ると、そこには見覚えのある女の子がいた。
何度も何度も資料で見た。
悲しい思いをしていたって資料で読んだ、あの子。
「え、エリちゃん……!」
すぐ横で行われている通形先輩の一発芸にリアクションができないくらいビックリした。だって実際にこうやって真正面から会うのは初めてで。
「素敵なおべべね。」
「かっかっ可愛〜!」
私もなにか話しかけようと考えて、エリちゃんに合わせて膝を落とそうとした瞬間、心がきゅっとそれを引き止めた。何か心が後ろに引っ張られる感じがして、身体がビクリと固まってしまった。
私なんかがいいのかな、と思ってしまったから。
私はあの時、治崎さんにも、幸せになって欲しいと願った。
でも、エリちゃんにも、誠実でいたい。彼女の幸せを切に願っている。それは絶対に本当で。
でもその両方が同時に叶うのか、と考えると、止まってしまうのだ。
みんなの声に驚いたのかエリちゃんは通形先輩の後ろに隠れてしまった。通形先輩曰く、照れ屋さんなんだそうな。
エリちゃんはこれから、通形先輩と出久くんと3人で文化祭の準備を見て回るそうだ。
「じゃーちょっと休憩挟もうかァ!ティータイム!」
それに合わせて私達も小休憩を挟んだ。
頭の中はごちゃごちゃと晴れないまま、楽しそうに学校の方に向かう3人組の後ろ姿に、小さく手を振った。
「安藤?行くよ?」
「あっ、うん!すぐ行く!」
みんなで幸せになれればいいなと、思う。