第49章 buzzっちゃったか
いつもの如く、今日も眠れなかった。
そしていつもの如く共有スペースに降りて、またソファの上で膝を抱えてぼーっとした。
持っていたガラケーで『ダンス』と調べてみる。
近くにあるダンス教室の広告や、色んな人が踊っている動画、それからダンスの由来などなどなど。
「んー……わからぁん……」
抱えた膝に顔をグリグリと押し当てて唸る。
もしダンス隊をやるとして、何をするのか。なにが出来ないといけないのか。調べてみたけれど、全然分からない。何からやればいいのか分からない。
膝を抱えたままグラングランと揺れ、ばたり、と倒れてみる。朝までに決めなければいけないのに、決められない。決める度胸がない。
「むぅぅ……んんん…」
唸りながら膝を力いっぱい引き寄せた。そんな時だった。
ポーン、とエレベーターの開く音がした音がした。誰か来たのだ。
「えっ、」
慌てて体制を整えて、乱れた髪を手ぐしで直しながらエレベーターの方をむいた。
「安藤?」
「あ、鋭児郎くん。」
彼は髪の毛を下ろしていて、少し心配そうな顔をしていた。
少し小走りで駆け寄って、私の隣に座った。
「眠れないの?」
「あ、いや……安藤は?まだ……その、あんま寝れてねぇの?」
「うーん……最近、寝れないのが当たり前みたいになっちゃってさ。えへへ……」
「そうか……。」
眠れないことを鋭児郎くんに言うことがなんだか恥ずかしくって、足をパタパタさせた。
「実は安藤に謝りてえと思ってさ。」
「えっ!?なんで!?」
「いや……謝るってのも変か。なんか、安藤今大変なのにさ、俺さっき……なんも考えずに、何も出来ずに、」
「あっ、う、そんなことっ、」
謝らないで欲しかったし、鋭児郎くんがなんだか妙に落ち込んでいるのも嫌だった。この嫌って気持ちもどこか冷たい気がして、なんて言ったらいいかわからなくなった。
私は下唇をグッと噛み締めると、鋭児郎くんの腕をがしりと握った。
「うぉっ!?」
「鋭児郎くんが落ち込むことはっ……ていうか、あの、なんていうか……違くて……でも……」
言葉が上手く出なくて下を向いたままだった。でも腕はどうしても離したくなくて、ぎゅっと握ったまま。鋭児郎くんの顔を見ることも出来ないまま、なんの言葉も出ないまま、小さく首を横に振った。
そんな私の頭に、彼はぽんと手を乗せてくれた。
