第47章 彼らが暮らした家
エリちゃんが苦しんでいたのは。
エリちゃんから笑顔を奪っていたのは。
通形先輩を苦しめたのは。
それ。
でも、
それを使ったら私は、
私の個性は
「つか、う、わけ……っ!」
「あれ?困ってたんじゃなかったか?自分の“個性”のせいで生きづらいんじゃなかったのか?」
声を聞いて、身体が止まる。
意思が揺らいで、持っていた剣も揺らいで、地面に1滴血液が滴る。
そして、止まった自分を恥じる。
「ばっ、バカにしないで!!私はっ」
「自分のお父さんの人生をめちゃくちゃにした“個性”じゃん。恨んでるんだろ。無くしたいんだろ。」
「っ、早く返して!!」
手がぶれる。
鼓動が早くなる。
ソレが敵の手に回ってしまったらどうなるか。
それを考えて行動しなきゃダメだ。
みんなは“個性”が無くなったら、助けられなくなる。
“自分”のことじゃない。“みんな”のことだけ考えろ。
揺らいだまま死柄木さんに向き変えると、腕をガっと掴まれた。また、動きが止まってしまう。
「俺たちはいつでもお前を待ってる。」
「やっ、どうして、」
顔は見えなかった。
揺れていることを悟られたくなかったから。
私は、彼と応戦しなければならないのに。
ヒーローとして。みんなみたいに、鋭児郎くんみたいに、お茶子ちゃんみたいに、環先輩みたいに、通形先輩みたいに、出久くんみたいに。
腕を振り払ってもう一度彼に向きかえる。
「返して!だっ、ダメだよっ!」
「やることがあるんだよ。」
目の前が青い炎でいっぱいになる。
「俺が相手だ。」
熱さはあとからやってきた。
なんか変な匂いするのを感じながら、炎の根源を睨む。荼毘さんが、ニンマリ笑っていた。
「前髪焦げてんぞ。」
「えっ!?うわっ!?」
前髪の変な匂いは燃えてチリチリになっていたからだった。
「やだぁっ!?」
「ほら、集中しろ。」
荼毘さんは容赦とか全然無く炎を放ってくる。
私は慌てて避け、それでも彼らから目を離さぬように必死に飛び回る。
「なにがしたいんですかっ!!」
そう言うと彼はふむと考えてからもう一度ニヤっと笑った。
「ひみつ。とりあえず今は八つ当たり。」
「えー!やだーっ!!?」
八つ当たり、という言葉通りに彼は物凄い勢いで炎を出してきた。
私はとにかく剣を構える。