第47章 彼らが暮らした家
「なぁ見ろよ。安藤がご立派にヒーローしてるぜ。」
荼毘さんが話しかけるその先には、見覚えのある白髪があった。
「死柄木、さん…。なにしに、ここに……」
「安藤、もうすっかりヒーローかよ。」
彼はコートを羽織っていて、髪の毛も少し伸びていた。彼らもあの時から確実に、少しずつ、変わっていた。
彼に遅れを取らぬよう、私もコスチュームを見せびらかすようにつまんだ。
「護送の、お手伝いです。」
「はっ、コイツのか?」
死柄木さんの足元には治崎さん。
拘束された状態の治崎さんが蹴飛ばされていた。
「ちょっ、ちょっと!」
「はぁ?こいつ“敵”だろ?なに焦ってんだよ。」
「蹴る必要なんてないじゃないですか!」
私は両手で剣を強く握り締め、死柄木さんを睨みつけた。
「相変わらずお前はめちゃくちゃだな。“敵”なんてどうなってもいいんじゃないのか?ヒーローは。」
「そっ…そんなことっ」
「まぁどうでもいいかそんなこと。オレはコイツが嫌いなだけだからな。」
彼はそう言うと私に背を向け、治崎さんの台に足をかけた。
「なァにが『次の支配者になる』だ。なぁ、そう思わないか?」
「っ……足を、下ろして……っ!」
「アマネ!“敵”の言葉に耳をかすな!そんなものに意味は無い!」
「はは、ひでー。」
私はスナッチさんに背を預けながら、ギリギリと死柄木さんを睨んだ。
スナッチさんの言葉は正しくて、かっこよくて、ヒーロー然としていた。だからこそ、私はまた止まってしまった。
じゃあ、私がさっきしてたのは。治崎さんは。
私は、なにを
「なぁ安藤、良いもんやろうか?」
暗雲が立ち込みはじめた脳内に、また彼の声が響く。
そちらを向くと死柄木さんは、小さな箱を見せびらかすようにして笑っていた。
「っ……スナッチさん!コンプレスさんに気をつけて!」
「そちらこそ」
足に体重をかけて一気に加速する。
死柄木さんの懐に入り込んでその小さな箱を取り戻そうとする。
その箱は、
エリちゃんを泣かせたもので、通形先輩を困らせたもので、
「お前もさぁ、自分の個性が無ければ良かったのにって思ったことあるだろ。」
すれ違いざまに囁かれる言葉に私の手元が狂う。
「“個性消失弾”。お前使うか?」