第46章 どんなに強い者も
『んでさ君、この“個性”使う?』
ヒーローになりたいとか思ったこと無かっただの、敵に興味があって近寄ってみたら個性盗られただの、相槌すら入れる隙もないくらいべしゃり散らした後、モヤモヤはいきなり疑問をぶつけてきた。
「あ、えと」
『だってコレ、望んでなかったのに渡されちゃったんでしょ?君って敵に“脳無”にされる予定だったじゃん。』
私が出さないようにしてきた言葉を、ソレは何の遠慮もなく言葉にした。気温が下がって、風が吹いて、少し雨が降った。ココロが本当に全部見られているみたいで、イヤだった。
『ありゃ、そんなにイヤ?』
「……。イヤだよ。」
『そっかごめんね!』
モヤモヤはあっけらかんと笑っていた。
『まぁ、君なら使うよね。色んな人の心を知りたがってるみたいだし。ほら、さっきだって』
「みて、たの、」
『まぁね。』
本当に、私を全て知っているようで。
それがこの“個性”の力なんだって、ちょっと怖かった。
『君はもしかして、“敵も”助けようとしてるの?』
「っ……。」
心の、ずうっと奥底の、ずっと隠しておこうとしていた想いを、言い当てられた。
思わず、下を向いてしまった。
「……。」
『変わってんね。』
「…良いのかな、こんなこと考えてさ。…言ったら、みんな、どんな顔すんのかな。」
『知んない。』
だって、お父さんはそうやってヒーロー活動をしていたから。私も、そうなりたいって思ったんだ。
“みんな”の居場所を守りたいって。
『知んないけど、やってみたら?この個性使ってさ。』
モヤモヤは、ただ提案をした。
思わずモヤモヤの方を見た。モヤモヤの中から足みたいのが見えた気がした。
『俺は沢山の人達のココロを見てきたけどさ。敵もヒーローもみんな、ただ認めて欲しいだけなんだよ。自分を。自分が今ここに居る意味を。』
「認めて…欲しい。」
『君が、それを望んでるヤツらを見つけてやりなよ。』
モヤモヤは、善でも悪でもないみたい。
だから、肯定も否定もしないんだ。
『どんな強いヤツでも、ココロは一緒だ。その点この“個性”は最強だよ。』
「……。」
この“個性”を使ったら、
笑顔になる人は増えるのだろうか。
「あ、の…使い方を教えてください。」
『お?』
「その“個性”の。」