第45章 まぶしい闇
聞いたことのある女の子の声に振り返る。
鋭く尖った犬歯、金色に輝く瞳と縦長の瞳孔が特徴的な彼女。手には刃物を持っていて、私を見ながらにんまりと笑っている彼女。
あの子だ。
私を捕まえたあの人たちの、
「久しぶりだね、ヒヨコちゃん!」
「おい、お前会ったことあんのかよ!?つーかこいつ、」
「ヒ…ヒミコちゃん。どうして…」
敵連合の、彼女だ。
気が付くとみんなとは分断されていて、この場にはロックロックさんと私しかいなかった。
「私はヒヨコちゃんにアイサツに来たのです!」
「はぁ?こいつ何言ってんだ?くそっ、こんな」
「き、来ますよ!」
「うるせぇや、誰のせいで」
「うーん、うるさいのはアナタかもです。」
のんびりした会話が続くと思った次の瞬間、ヒミコちゃんはフラりとナイフを振り下ろした。
私達は寸でのところでそれを躱したけれど、それもつかの間。
私はロックロックさんの後ろに、"もう一人のヒミコちゃん"を見つけた。
「ロックロックさんっ!後ろ!」
「はぁっ!?」
ロックロックさんは一瞬で拘束されて、
後ろから、グサリ
「っ!?」
彼は、倒れこんだ。
私は、立ち尽くした。
「もうすぐ出久君来るんじゃないかな。ヒヨコちゃんも分かる?好きな人に会えるってドキドキ!」
「で、ヒヨコちゃんはここでなにしてるの?」
「それってそんなに苦しくてもやらなきゃいけないこと?ヒヨコちゃんは何の為に辛くて嫌なことするの?」
その質問に、すぐに答えることができなかった。
悔しくて仕方なかった。
唇を舐めると血の味がして、少し痛かった。
手を開くと手のひらから血が滴っていくのを感じた。力を籠めすぎたみたいだ。
血はそのまま固めて剣に。
流した血でも、無駄にはせずに。
私がここにいる本当の理由は、
私の理由は、なんだろう?
「私は、だめだめだ、」
「はぁ…」
「だから…自信なんてあるわけなくて、必死で、何とかしなきゃって、思って…る、から」
言葉の間に嗚咽が挟まる。
視界が、滲む。
あーあ、かっこ悪い。
ほんと、ダメなやつ。
「みんな、凄すぎるよ、」
叫び終わると同時に、壁が壊れて、ヒーローが転がり込んできた。
私は、涙をそのままに剣を構える。