第45章 まぶしい闇
少し進むと、壁で道がふさがっていた。
「俺、見てきます!」
そう言ってミリオ先輩は迷わず壁を抜けていく。そんな後ろ姿がかっこよくて。
「壁で塞いであるだけです!ただかなり厚い壁です!」
その言葉を聞くやいなや、レッドライオットとデクは動き出した。
「来られたら困るって言ってるようなもんだ。」
「そだな!!妨害できてるつもりならめでてーな!!」
そうやって迷わず壁を壊す彼らを見ると、私の胸に生まれた焦りがどんどん大きくなっていった。
この焦りにのまれないために、この闇に、のみ込まれないように。必死に自分を取り戻すように、頬をパチンとたたく。
「安藤さん、ほ…ほっぺ赤い」
「先輩これはっ、気合を…入れたくて。」
「そうか……」
赤くなった頬で壊した壁の向こうを見る。
どこまでも続く暗い道は、
あれ、
少しずつ、
歪んでく。
「っ!?」
「道が!!うねって変わってく!!」
まるで異世界のようで。
現実を疑ってしまうような景色だった。
さっき必死になって暗記した個性を思い出しても、誰がこんなことしてるか、誰がこんなに規模の大きいことできるかなんて、分からなくて。
「考えられるとしたら……本部長『入中』!」
警察の方がそう大きく告げる。
確か、本部長、入中さんの個性は、モノに入り自由自在に操れる個性“擬態”。規模が信じられないくらい大きくなっているけれど、ファットさんは、個性をブーストさせてるんじゃないかって、そう言ってる。
あの時の、刃物男さんのような、ブーストを。
あの時を思い出してぞくぞくと悪寒がはしったが、そんなのしまい込まなければと手をぎゅっと握った。
「こんなのはその場凌ぎ!どれだけ道を歪めようとも目的の方向さえわかっていれば、俺は行ける!!」
「ルミリオン!」
「先輩!」
そんなカッコイイ声の方へ顔を向けると、先輩はもうそこにはいなくて、壁を通り抜けていくマントだけが見えた。
ミリオ先輩は、やっぱりすごい。
先輩がこんなに頑張ってるのに、私は、なにも。
「先向かってます!」
「ミリオ……!」
頬を叩いて前を向いて。
それでも、私は。
グワン、と空間が揺れた。
空間丸ごと揺れたかと思うと次は地面が無くなった。
落ちていく感覚は、気持ち悪くて、怖かった。