第45章 まぶしい闇
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死穢八斎會事務所・邸宅
静かで、誰もいない。
昔からある日本家屋のその奥で、この家に似つかないペストマスクをつけた男が語る。
「すいません組長、うるさくなりそうだ。」
その声に返す人はいない。
返してほしい人はもういない。
返せなくさせたのは、誰だ。
そんなこと、この男は誰よりわかっている。
きっともうそろそろ、この家にヒーローがやってくる。彼らが過ごしたこの家に、ヒーローが。
彼は、ヒーローなんて大嫌いだった。
個性なんて病気だと思ってるし、それを振りかざすヒーローなんて重病人だと思ってる。
こいつらの、せいで。
恩人は。
『治崎、ありがとうよ。』
誰しもに“オリジン”があるとするならば、彼にとってのオリジンはきっとそれだ。
そのなんてことない言葉だ。
名前を呼んでくれたその声だ。
撫でてくれたその優しい手だ。
その声が、彼の居場所になって。
その居場所を守るために彼はなんでもしてきた。
文字通り、なんでも。
「もうすぐ、もうすぐだ。」
彼は告げる。
「もうすぐで、計画は…。」
無感情のように、怒っているように、悲しんでいるように、笑っているように。
「だからもう誰にも、邪魔はさせない。」