第45章 まぶしい闇
「プロみんな落ち着いてんな。慣れか!」
「鋭児郎くん…!」
瞬きを何度かしていると、目の前に鋭児郎くんがぱっと現れた。彼は少しだけ緊張した顔で私の顔を覗き込んでいる。
確かにたくさんいるヒーローは、みんな落ち着いている。相澤先生とか特に、いつも通り。
私は恐る恐る彼の目を見て、さっきの不思議な光が走らなかったことに少し安心した。
「ん?どうした?」
「ううん、なんでも。ちょっと、緊張。」
「そっか。そうだよな。」
「うん。」
きゅーっと強く握った私の指は、開いてみたら手汗まみれだった。
「頑張らなきゃだね。」
「おう!」
「そうだ、先輩にも、あいさつしなきゃ。」
「お、そうだな!」
止まっているとなおさら緊張するから、私はちょこまかと動き回って先輩を探した。
「あっ、先輩!」
「わっ…安藤さん…。」
先輩は、いつもと同じでおろおろと、私の目を見てくれはしなかった。
やっぱりどこかおかしいんだと、心が大きくざわつき始める。
「…先輩、やっぱり私、なんか、変なんですかね…?」
「…安藤さんは…特殊な人間だと、思う。」
「えっ!?」
「目が合うと、なんか、あれだ。…電気が、はしるっていうか。」
「ええーっ!!やっぱりー!?」
がーんと頭に効果音が響く。
なんか、何なんだろう。
そういう個性なんだろうか。
どういう、ことなんだ。
「そん、な…。」
「そ、そんな落ち込む…とは…。そんな落ち込むことじゃ、ないぞ。…いやな、感じはないし。」
「でも、そういう、個性だったら…。」
「…個性…なのか、あれ…」
2人でううむと考えていると、ファットさんが事務所の集合をかけた。
「もうちょいで出動や。用意はええか?」
「はい。」
「おすっ!」
「はいっ!」
「あ、環コレ食うとき。カジキ」
「…何でカジキ…。いただいておきます。」
カジキをもくもくと食べる環先輩を見てたら、目が合った。そしたらパッと目をそらされた。さっきみたいな閃光は生まれなかった。
「相手は仮にも今日まで生き延びた極道者。くれぐれも気を緩めずの各員の仕事を全うしてほしい。」
警察の方がそうやってヒーローを奮い立たせる。
ヒーローたちは、動き出す。
エリちゃんが、みんなが、
幸せになれますようにと
願いながら。
祈りながら。
「出動!」