第45章 まぶしい闇
決行日。
AM8:00
警察署の前には、たくさんのヒーローと警察の方々が居た。そんなざわざわの中、私はひとり、目を瞑っていた。
心臓は静かに、でも大きく脈打っている。
緊張で、なにも喋る気になれなかったから、私は必死になって八斎會の登録個性のリストを暗記した。
それからひたすらに、考えた。
エリちゃんって、どんな子なんだろうって。
エリちゃんのお世話係の人はモーレツプリユアのおもちゃを買ってたらしいけど…。
エリちゃんは少しだけ私と似ているのかも、と思ったりもした。
いやでも、違う。
みんなが居なかったら、私はなすすべも無く敵に利用されてたと思う。心まで悪に染まって、自ら犯罪に手を染めて。
そして、ヒーローに捕まって。
助けてもらえなかったら私は、目も当てられない凄惨な未来をたどっていたと思うから。
みんなが手を引いてくれたから。
私はここにいる。
手を引かないと。
エリちゃんの。
でも、それだけ?
他には、居ないの?
他に、寂しい人は居ないの?
私は、みんなで笑っていたい。
目を開いて、胸の前で組んだ指にぎゅっと力を込めた。
「あまねちゃんイメトレか?」
ファットさんはいつも通り私を見る。
「あ、イメトレじゃ、なくて、えと。」
「…どうした、ゆうてみ?」
覗き込むファットさんに、私はゆっくり目を向けた。
「私、みんなで幸せになりたいです。」
「お、そやな!」
「悲鳴が聞こえたら、助けたいです。」
「おお、ええぞ!」
「悲鳴が聞こえたら、私は…誰であっても…助けたい」
「ひよこちゃん?」
「…それで、いいんでしょうか?」
答えを求めてファットさんを見つめた。
ファットさんの目は、金色で。
バチンッ!!
私の目がバチリと閃光を放った。電気が走ったみたいに、爆発が起きたみたいに。比喩じゃない。
「な、なんや今の!?」
「!?」
一瞬だったし、何が起きたのかもよくわからなかった。
「ごっ、ごめ、」
焦る私を見て、ファットさんは私の頭を撫でた。
「う、うんっ!びっくりはしたけど悪い感じはせえへんかった!大丈夫や。」
「えと、」
「今は目の前のことに集中しよか!」
「は、い…」
時刻は8:05を少し回ったところ。
せわしない頭の中に、また新たな不安が生まれた。