第44章 何者
その夜、鋭児郎くんの肩を借りたらすこしだけ眠れた。ちょっともたれかかってしまっていたみたい。
朝は、ふたりで眠っていたところを一番早起きの天哉くんに起こされた。
その日の学校はすごく眠たくて、授業ではすこしうとうとしてしまって、先生に少し怒られた。
「ひよこちゃん眠そうね。」
「…はっ、あ、へへ…。実は昨日、あんま眠れなくてさ。」
「…やっぱり、落ち着かないわよね。」
ご飯を食べながらこっくり舟をこいでいたところを梅雨ちゃんが見てたみたい。
梅雨ちゃんはインターンのことを知っているから、なんで眠れなかったのか、察してくれた。
インターンのことは口外禁止だから、このもやもやは私たちの中で解決するしかなかったのだ。
「…考えちゃうんだ、いろんなこと。頑張んないとなって、おもうんだ。」
「そうね。」
「なあに?インターンの話ー?」
私の正面でご飯を食べていた三奈ちゃんがほっぺにお米をつけながら首を傾けている。
「そうよ。でもごめんなさい。インターンのことは口外禁止なの。」
「そっかぁ!頑張ってんだねぇ!置いてかれないように頑張んないとだ!」
「うん…まけないよ!それと三奈ちゃん、お米ついてるよ!」
「えっ!どこ!?」
元気いっぱいの三奈ちゃんを見たら、なんか頑張らないとって気持ちになった。お米は取ってあげた。
どれだけ学校の外で大事件が起きていても、学校はあんまし変わらない。いつもと同じだ。
でも、元気のない出久くんや鋭児郎くんやらを見ると、インターンなんだなって、大事件なんだなって思う。
その日から、私はあまり眠れなくなってしまった。
どうしようもなく眠れないときは、共有スペースに向かう。
共有スペースには、誰もいない。
誰もいなくて、暗くて広い。
急に寂しくなって外にでても、やっぱりというか、誰もいない。
前みたいに星、見たら元気になるかなって。
なんて思ったりしたけれど、星はただ綺麗なだけで。見るとなんだか、寂しくなる。
私は、星がきれいだったから元気になったのではないんだなと、今更思った。
そっか。
彼が、いてくれたから。
彼がいたから寂しくなかった。
彼がいたから、眠れない夜も悪くなかったんだ。
会いたいな。
なんて、思った。
この夜を通り抜ければ、またすぐに会えるのに。