第44章 何者
「えー、それでは始めてまいります。我々ナイトアイ事務所は2週間程前から_____」
緊張気味のヒーローが、文章を読み上げていく。
あのヒーローも緊張してる、と少しだけ心を落ち着かせることができた。他の人が緊張してるのみると、なんか安心する。
たくさんの有名ヒーローが固唾を飲んで見守ってるんだもん。そりゃ緊張するよ。
なんて彼女を応援してたら、話がよくわからなかった。難しい言葉多いし。
分かったのは、“しえはっさいかい”っていうところが、ちょっと穏やかじゃないってこと。
次いで話し始めたのはナイトアイ事務所のサイドキック、大きなムカデのヒーロー。
触覚がうねうねしててカッコ良い。すごい、ダンディさだ。
彼の姿にぽーっと見とれていたら、彼の口から、あの言葉が出た。
「“敵連合”の一人、分倍河原仁、敵名トゥワイスとの___」
私の中だけ一瞬時が止まった。
「連合が関わる話なら…ということで俺や塚内にも声がかかったんだ。」
グラントリノさん。
前に会ったのは、ステインさんの時のアレだ。私が、“覚えてる限りだと”。
私はゆっくり下を向いた。
少しでも気を紛らわす為に、手でカエルを作ってみた。
手汗で湿ったカエルだ。
また難しくて深刻な話。
また、敵連合だ。
もしかしたらまた私、また彼らに、死柄木さんに、捕まるって、思われてるかな。みんなに、ひどいことをするかもって、そう思われてるかな。
私が一番、怖いのは、
「ぬかせ!この三人はスーパー重要参考人やぞ!!」
「うっ!」
ファットさんのいきなりの大声に肩が飛び上がる。
大きい声をいきなり向けられて、私は考え込んでいたことにやっと気がついた。
「えっ、と…?」
「俺…たち?」
「ノリがキツイ……」
各々思い思いの声をあげた。
話を全然聞いてなかった私は、なんの重要参考人なのか、全くわからなかった。ぬかすって、なにを?
ポカンと開いた口を、そのままゆっくりサー・ナイトアイに向けた。
彼が、話し出す。