第44章 何者
「あなた方に提供して頂いた情報のお陰で調査が大幅に進みました。死穢八斎會という小さな組織が何を企んでいるのか、知り得た情報を共有と共に協議を行わせていただきます。」
鋭い眼光をしたメガネのお兄さんが、事務的につらつら告げる。
確かこの人は、オールマイトのサイドキックだったサー・ナイトアイ。見るのは…じゃなかった、会うのは初めてだ。
しえ、はっ…なんだっけ?
なんか言いづらそう。
頭の中ははてなと不安と、サー・ナイトアイだー!っていうヒーローファン心だけ。
サー・ナイトアイ、だけじゃない、相澤先生も居るし、ファットさんも居るし、グラントリノさんも!それにドラグーンヒーローリューキュウも、それにそれに…
ヒーローファン心を盛大に擽られていると、本題を忘れかけた。いかんいかん。
「俺置いてけぼりなんすけど…ハッサイ?何スか?」
「うんうん。しえはっ、って言い難いです。」
鋭児郎くんと一緒にファットさんに聞いてみたけれど、
「言い難いんはそこの会の人に言ってや。その会が悪いこと考えてるかもしれんからみんなで煮詰めましょのお時間や。」
よく分からなくて、鋭児郎くんと顔を合わせ、二人揃って頭の上に疑問符を浮かべた。
「おまえらも充分関係してくるで。」
ファットさんの目は、環先輩の、包帯を巻いた腕に注がれていて、私はあっ、と声を漏らした。
「先輩先輩!腕っ!個性って、」
「あ、いや、大丈夫だ…から。」
先輩は、目を合わせてくれなかった。
すんごい、逸らされている。
「環先輩?」
「あ、いや、ほんとに…」
もう一度呼んでみても、前髪で目を隠して、すごい、逸らされる。
なんか、また胸がドキドキした。ズキンって痛くなった。…嫌われたかもっていう、恐怖で
「皆さん、では席に着いてください。」
心の中が慌ただしくて仕方ない。
行ったり来たり、曇ったり、雨が降ったり。
激しく脈打つ心臓を連れて、私はちんまりイスに座った。