第44章 何者
「ねぇねぇ、今日ほんとに、コスチューム要らない…?」
数日後、私は寮の玄関先で鋭児郎くんと話していた。
今日はインターンの日。久しぶりにファットさんや天喰先輩と会う。
でも、今日はちょっとイレギュラーで、荷物も違えば行き先も違う。違うと、ちょっと不安。
リュックサックしか背負っていない私は、あいている手をわきわきした。
「そうやって連絡貰ったから多分大丈夫だ!」
「そぉ…だよねぇ。そう、だよね。集合場所も…」
「違うぞ!!」
なんやてぇぇえ!?
コスチューム忘れたァー!?
ていうか自分らどこにおんのや!!?
なんでそんなとこおんねん!?
なんて、怒るファットさんを勝手に想像してしまう。
もしファットさんに叱られたら…と胸をじりじりさせた。
「なんか、落ち着かない。」
「そうなのか!まあ、多分大丈夫だろ!」
明るく楽観的な鋭児郎くんが、いいなって思う。羨ましい。すぐお腹痛くなる、じぶんのそういうとこ、ちょっとやだ。
「お!?緑谷ァ!おはよ!」
その声に、お腹を擦りながら後ろを振り返る。
「あっ!おはよー!きぐーだね!」
寮の扉を開けてでてきた彼は、いつもの大きなリュックを背負って、てってとこっちに駆けてくる。
ちょっぴり、不安そうな顔。
「しばらく呼ばれなくってやっと今日だよ。コスチュームは要らないって言われたけど…」
きぐーが過ぎる…と少し安心して、お腹をさする手を止めた。
「あれー!?おはよー!!3人も今日!?」
またも響いた元気な声に振り返ると、お茶子ちゃんとつゆちゃんが居て。
きぐーが過ぎすぎてしまった…と制服をぎゅっと握った。
なにか、なにか重要な、大変なことがあるんじゃないかって、心臓がどっくん大きく跳ねた。
服の裾を握ったら、手汗が、すごかった。
いつもと違う、でもみんなと同じ駅で降りて、
いつもと違う、みんなと同じ道を歩くと、
「お!」
「わ!」
「……」
当然のようにビッグ3の先輩も居て。
みんなと一緒に建物に入るとそこは、有名なヒーローで溢れかえっていて。
「なんじゃ、こりゃぁ!」
「お、あまねちゃん、朝から太陽に吠えとんな!」
「あ、ファットさん!今日はどうして、」
「あの案件や。」
濁して言うようなそんな言葉に、もう一度心臓がドキンと大きく鳴った。