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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第43章 疾走するケダモノ


Side 天喰環


「……。」
「……。」


俺は今、どういう訳か、後輩女子と帰路を辿っている。
とても、気まずい。

話しかけようにも話すことが無い。
しかも、なんかすんごく落ち込んでるのがわかる。

俺だって落ち込んでるのにな。


「先輩…あの、」
「な、」


静寂を破ったのは彼女の方だった。
おずおず、申し訳なさそうに声をあげた。


「そのぅ…聞いたんですけど…個性…」
「…使えない。」
「あ、えと…わぁ…その、ごめんなさい。」


隣で歩いているはずの彼女の声はどんどん小さくなって、消えた。

気にしてしまうタイプか。
俺と似てる…のかも。


「いや、安藤さんが謝ることは…。切島くんが身体をはってくれたお陰で、原因物質も回収できたようだし。」
「……。」
「心配は…」


あれ、
彼女の声が、聞こえない?

声の代わりに、なんか、喉をしゃくり上げる音と、ズビズビと鼻水の音がする。


あれ、これってもしかして…。
やってしまったか?

と頭の中で警鐘がなる。


女の子、泣かしたか。
と。


「え、あれ、え?」
「…先輩凄いし、ファットさん凄いし、ひっく、鋭児郎くんも凄くって、で、も、それなのに、私…」
「ちょ、え、あの、」
「まただめだっだぁ…」


そう言うと、安藤さんはなんと、堰を切ったように涙をこぼし始めた。急に、抑えていたものを、全部…みたいに。


「う、えぇ、ひっく」
「あ、や、その」


立ったまま、雨のように涙が落ちる。
こんな風に涙を流す人を、初めて見た。
それくらい、大きく。

面食らった俺は真っ白な頭をなんとか回す。
傍から見たらきっと、すんごく滑稽だろう。


「ないで、ない、でず」
「それは嘘だ。」
「ひっく」



もう、俺はどうしたらいいのか。
こちらも半泣きになりながら、必死に彼女の涙を止めようとした。

「安藤さんは、その、が、頑張ったんだろ。なら、まずはそれでいい、と、俺は、思う。」
「ぐず…」
「実際俺も、最初はかなり、アレ、だったし。」
「ほんど、でずが?」
「あれで泣かれるなら、俺はどうなるって、話だ。」


慰めの言葉に、自虐が入る。


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