• テキストサイズ

夢を叶える方法【ヒロアカ】

第40章 〈番外編〉我逢人




「ポッキーゲーム?」


ひよこは、あほ面で繰り返した。
周りの女子たちは、ゲームやってみようよとひよこの手をひく。


そんなバカみたいな状況を、遠くから眺めていた。


ひよこは知らないくせに知ったふりをして、おーやろうやろうだなんて適当に話を合わせている。

相も変わらず最高にバカ。


あんな大きなことがあったのに。
あいつはいつもと同じ“にしている”。


「じゃあ誰と対戦してもらおうかなー!」
「へ、対戦するものなのか…。」


小声のつもりかなんなのか。
バカ丸出しで呟いたそいつは、ポッキーを持って立ち尽くしている。


ざわっとどこかが騒がしくなった。

そこら辺。
男どもの、そこら辺。


「おい峰田聞いたか。またとないチャンス…!」
「俺の耳をなんだと思ってる!女子と合法的にポッキーゲームが出来るんだぞ。」

「…安藤と……。」


腹立った。

なんでか、知らねぇけど。


足があいつに向かう。
ほとんど無意識に、つま先があいつに向いた。

他の奴らのザワザワを沈めるために。
心のコレを、沈めるために。


「えと、対戦って…わんおんわん?」
「なにそれ、バスケ?」


そんな馬鹿な声が、少しだけ近づいた。
髪が揺れるのが見えた。

髪は、昔から変わらない。

瞳も。

いや、瞳は変わったか。


「あ、え…勝己くん?な、なに?」
「もしかして爆豪……まさか…」


無言で近づけば、そいつは不安に瞳を揺らす。
熱を持って、瞳にはられた涙は波紋をおこす。

その瞳は、俺をいつも。


「それ渡せよ。」


言葉がひよこの耳にたどり着く前に、俺はその手のものをひったくるように手に持つ。

ひよこは、潤んだ瞳でただじっと、覗いてくる。


あぁ、うぜぇなァ。


「くち、あけろよ。」
「な…んで?」


「すんだろ。ゲーム。」


半開きになったその小さな口に、俺は手に持ったそれをぐさりと突っ込む。

あんなあほ面に、釘を刺すように。


そして、もうひとつの端に噛みついて。
広がるチョコレートの味を舐めながら、近づいたひよこの顔を見た。


開かれた大きな瞳の中には、憮然な顔の俺がいた。


/ 728ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp