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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第39章 ベイビー、グッドモーニング




「とまァー、こんな感じなんだよね!」


言葉の出ない痛みにくの字になる私の耳に、そんな脳天気な声が響く。

さっきと全く変わらないその声に、むっとした。


そして、


「俺の“個性”強かった?」
「強すぎっス!」
「ずるいや!」


みんなはぷんぷん怒ってる。


私にはそんな余裕なくて。

内臓がぐちゃぐちゃと混ぜこまれちゃったみたいに気持ちが悪くて、でも、呻きたくても呻けない。


なにかが喉に詰まってるから。

内臓かな、血かな。
たぶん、違う。


「…せ…ん……ぱい…は…」
「安藤?」


くの字の背を伸ばしながら
私は詰まったものを吐き出す。

ペラペラと楽しそうに話す先輩の声は、届かなかった。というか、こんなお腹の状況で届くわけない。


「…せんぱい、すごい…。」
「お、おう、それは分かるぞ…!」


「かっこ、いい…かっこいい!」


そんなふうに、喉に詰まっていた“感情の塊”を、ぼろぼろと雨のように吐き出した。


太陽みたいに笑いながら今までのこと、先輩は話してる。

なんのつらさも見せないみたいに、笑ってる。

全部魔法で手に入れたみたいに。
そんなはずないのに。


「俺はインターンで得た経験を力に変えてトップを掴んだ!」


努力の……天才。

じゃあ、他のふたりも?
本当に?


そう思ってふたりを見たら、また鳥肌が立った。ぶわっと、毛穴が。


なんてかっこいいんだろう。

素直で大きいそんな言葉が、心に溶ける。


「インターン……いきたい」


喉の詰まりを吐き出せば、指先が熱くなって、頬が熱くなって。

心臓も大きく動き出す。


美人すぎる先輩。

太陽みたいな先輩。

それから、ノミみたいな先輩。


3人は、努力のヒーロー。




『ひよこ。ひよこはね、日向みたいに暖かく、みんなを照らせるような、そんな人に____』


ふいに、そんな懐かしい声を思い出した。


日向になるには、どうすればいい。
少しでも“太陽”に近づくにはどうすればいい。


体育館を出ると、ぬるい風が頬を撫でた。

秋になりきれない、むっとした風。
初めて嗅いだ、新しい風。


『カインドネスはいつでも優しく、そんな彼の武器は____』


風に乗った葉を振り返り、口を緩んで開く。


「武器は……言葉。」


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