第39章 ベイビー、グッドモーニング
「…言葉で全てを解決できるのは、腹ん中までさ。」
俺はぽつりと呟いた。
太陽なんてない
風すらない
日向なんて、あるはずのない
ほこりっぽく暗い場所で。
「死柄木、どうしたのですか?」
「いや?なんでもない。」
少し、思い出していた。
あの、日向みたいに暖かい。
馬鹿みたいに真っ直ぐで、馬鹿みたいにあったかい、あいつ。
「トゥワイスはまだか。」
「ええ、まだ。」
トゥワイスが連れてくるのは、どんな奴なのだろうか。
なんでもいいか。
俺の動きやすくなるならばなんでもいい。
俺の手が届く範囲が大きくなればなんだって。
「楽しそうですね。死柄木。」
「…そうか。」
黒いコートに、顔にぴったりとつく手のひらの感触。
心地いいとは言えない。
今、季節はなんだろうか。
少し肌寒く感じた。
風も少し、冷たくなった。
あいつにあったのは、そう。
暑くて、息苦しい、腹の立つ夏の日だ。
あれからもう、季節は巡ったのか。
それとも、変わりきってはいないのか。
トガは、こないだ会ったんだと。
“仮免試験”で、あいつは。
俺の与えた個性を使ってたと。
あんなに嫌がっていたのに、使いこなして。
笑っていたらしい。
“私のいない世界で笑う、
お前を許せる日は来ない
世界は苦痛で満ちている。”
なんてな。
俺は進んでる。
俺は確実に、大きく、黒く。
安藤、お前はどうだ?
まだ殻の中か。
まだカゴの中か。
俺はもうここまで来た。
とどく範囲の広くなった腕は、なんの為か。
そしてとどいた腕で、何をする?
それは、お前にはまだわからない。
「来たみたいですよ。」
「あぁ。」
だからさ、
もう、うまれろよ。
「起きろよ。安藤」
俺は、先に行く。
……in the darkness