第39章 ベイビー、グッドモーニング
目が点…ってこの事なのかなって、頭の中でプカプカと浮かんだ。
太陽みたいな先輩は、なんだかすべり倒したみたいだけれどそんなことを気にすることなく大きな声でしゃべり続けた。
「1年から仮免取得…だよね、フム。今年の1年生ってすごく…元気があるよね…」
ぽつぽつと呟きをこぼすけれど、それらも結構大きい。
それに先輩はなんだか、笑っているのだ。
ニヤニヤと不敵に。天喰先輩はまだ後ろを向いて暗雲を宿らせているというのに。
天喰先輩の時は自分と同じにおいがしたからすぐ分かったのに。
あの“太陽”の先輩は、なんだか遠くて、遠すぎて全く、分からない。
「そうだねェ…何やらすべり倒してしまったようだし…」
「ミリオ!?」
「君たちまとめて、俺と戦ってみようよ!!」
天喰先輩の驚いた声も、
太陽の先輩の名前が“ミリオ”だということも、
頭には入ってこなくて、
「へぇ」
と空気が漏れたみたいな音しか零れてこなかった。
戦う?
急にそんな、またまた。うそぉ。
そうやって呆然と動かないでいたら、誰からともなくガタガタと椅子を引く音が響いた。
その音はだんだん大きくなって、私も椅子から立ち上がらざるを得なかった。
太陽みたいな先輩は、カラカラ笑って、眩しい。
なんだかすごい人間なんだろうなど思う。
なんだか遠い人間なんだなとも。
ヒーローインターンに行ったら少しは近づけるのかなぁ、なんて心が少しだけ熱くなった。
歩いてるあいだも少しだけ、頬が熱かった。