第38章 眇の恋心
「ねぇ!ひよこちゃん!…大丈夫?」
「はっ!…あれ?」
聞き慣れた声で、私の意識はフッと呼び戻される。
廊下を歩いてた…みたいだった。
天哉くんの大きな声が耳いっぱいに響いて、だんだん状況を把握していく。
ここは、始業式へと向かう列の中…なのか。
考えていたんだ。
告白のこと。
ただ漠然と、どうしようって。
告白したら、出久くんは困っちゃうんだろう。
優しい彼のことだから、きっと。
困らせたくない。
でも、想いを伝えるって決めた…。
私は、私にできること探すって、決めた…し……
「えぇー組ぃー!!」
「ぬ゛ぁっ!?」
また思考がふっとんで行きそうになると、今度は肩をガッと掴まれて強引に意識を引き戻される。
多分、引き戻すために肩を掴んでくれた訳では、無い。
「B組の、も、物間くん!」
「聞いてるかぁい!?」
彼は私の肩をグングンと揺らしては合間に言葉をぶつけてくる。彼は相変わらずだ。
「二名!!そちら!仮免落ちが!二名も!出たんだってぇ!?」
「わうっうわぅっおわぁっ」
「B組物間!相変わらず気が触れてやがる!」
されるがままに揺らされまくって、意識は完全に浮上した。
しらふの頭で物間くんにされるがままにされるのは腹が立つみたいで、ぐいぐいと腕を掴んでポイと離した。
「なにするんすか!」
「ふん」
私がプンスカと怒っても、彼は痛くも痒くもないみたいで、物間くんは鼻を鳴らしてB組の列へ戻っていく。
なんだか、どこまでも舐められている気がする。
なんと腹立たしい。
私はさっきまでぼーっとしてたことも忘れて腹を立てた。
B組は、全員合格だとか、なんだとか。
別に競ってる訳ではないけれど、なんだか無性に悔しくて。
少しだけ、対抗心が芽生えた。