第38章 眇の恋心
「そいでね…私、」
「あ?」
「私、ちゃんと言うよ!伝えたい、って、思って…伝えて……ちゃんと、大好きだって……い、う……」
「……言う…」
「こっ、ここっ、こく、」
ひよこはもだもだと指をいじり、それからパッと顔を上げ、鶏のように繰り返す。
言おうとしてることは、分かる。
そんなの分かるに決まってる。
まぁ、ひよこが言おうとしていたことは予想外の邪魔者に妨害されたのだが。
「おいかっちゃん!!ひよこちゃんに何してるのさ!」
「こっ、ここっ!!コたつにはいりたいなぁ!!」
ひょこっと出てきた件の相手に、目の前の真っ赤な顔はズッコケる。でも、なんとか必死のバランスで保ったらしい。
「えっ、なんの話?なんでこの時期にコタツ?」
「あっ、えっと、こたつって、お、オールシーズンだよね!」
「え、違うと思うけど、そんな話するの君らって。」
また、ため息が出そうになる。
また、ぐるぐるぐるぐる、回るつもりだろうか。
また、見てるだけに戻るつもりだろうか。
きっと違うだろうけど、そんなの目の前で展開されんのは、
「……くそうぜェ…」
「え?」
「おいクソデク!」
「えっなに!!」
「今日の放課後、表出ろ!」
「えっ、またぁ!?」
「俺じゃねぇわ!」
ムカつく不満げな顔の真ん前に、グイッと拳を出して、親指でそいつを指さす。
当の本人は、驚いた顔で固まっている。
「えっ、ひよこちゃん?なんの用だろ?」
「えっ、あ、やっそんなっそのっ」
「さっき言うって言ったろ。」
ぐぬぬっ…とマンガのように悔しがりながら、ひよこは俺を睨みつけている。
「あっそういえばひよこちゃん!もうみんな学校行っちゃったよ!」
「えっ!あ、もうこんな時間…!!」
ひよこは色々と慌ただしく準備を進め、色々と慌ただしく表情を変え、最後は真っ青な顔をして寮を駆け抜けていく。
「じゃあひよこちゃん!また放課後!」
「あっ……うん!」
そんな会話を、最後に。