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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第38章 眇の恋心





個性を人に渡すことなんて出来るのか。



そんなの知ってる。

答えは“Yes”だ。

だって私は、身をもって知ったから。


だからこの話が、冗談にも何にも聞こえなくて。
ただ、その重荷に、気づかされただけ。


個性を渡される混乱も、重みも知っているつもりだ。


…彼が必死に隠していたもの。
守っていたものを盗むみたいに、



「……きいちゃっ、……た…。」



ぐるぐると長い時間混乱して、重い頭を動かして、最初にこぼれ落ちてしまった言葉は、そんなものだった。


そうやって自然と漏れてしまった言葉は、勝己くんの爆発音にかき消された。


本格的に、戦闘が始まってしまった。

ふたりの、本気の殴り合い。


起きるべきして起きた。
いずれそうなるはずだった


私は何も、考えたことなかった。
彼らが何を、抱えていたのか


私、自分の悲しみにばっかり、かまけて。


出久くんの重荷も、

勝己くんの苦しみも。


私は何故だか泣きそうになりながら、必死に目を閉じ息を潜めた。



「なんで!!」


勝己くんの声が聞こえて、私は両手で口を覆ったまま彼らの方を覗き込んだ。


絞り出すような悲痛な叫び。

聞いたことない、聞いたことあるはずのない、勝己くんの悲鳴だった。


「何で俺はっ!!」


目が熱くなった。
必死に、唇を噛んだ。



「俺は……オールマイトを終わらせちまってんだ!」



頬を熱いものが伝っていくのが分かってしまった。


「俺が強くて敵に攫われなんかしなけりゃ……あの時!一緒にひよこを連れ帰ることが出来てたら!!あんなことになってなかった!!」


誰にも見えていないところで、誰も見つけていないところで。

泣きそうなのを必死に押し殺して、首を振った。


違う、
勝己くんが悪いわけない。


甘えて、頼って、自分のことばかりだった私が。


守ってもらってばかりで、
大切なふたりのこと、ちゃんと考えられていなかったんだ。


彼らは、

打ち明けてしまいたいと思った時、
重荷に耐えられなくなった時、

ただ、一人でずっと耐えていたんだ。


私は、それが寂しい。


どうすればよかったのか、


わからないのが情けなくて、悔しくて、寂しくて。


切実な爆発音に隠れてただ、



大声で、泣き叫んだ。


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