第37章 Let's struggle!
「おい……。」
「真堂、さん?」
その手は、真堂さんのものだった。
驚いて振り返れば彼は、初めてあった時とはまるで違う人間の顔をしていた。
「安藤。お前……戦闘に向いてないよ。無理して、やってんだろ。」
「むっ!そんなこと!」
真堂さんは、白目をむきながら、震えながらそう言い放った。
「さっきだって、なんだ、あれ。敵の心配する、なんてさ。そんなん、してたら身が持たないっての、バカが。」
「……バカって…」
這いつくばったまま、彼は私へ、いろんな言葉をぶつけてきた。
それは厳しい罵倒で。
ぐつぐつと、腹が立った。
「でも、向いてないから、やらなくていいには、ならないんだよ、プロはさ。常に、周り見て、自分のできる最善を、考えんだよ。」
「周り……。」
「先輩の、偉大なお言葉。」
敵、ギャングオルガさん達の方を見れば、夜嵐くんも、轟くんも居て。
敵の制圧は私より多分、ううん、ずっと向いている。
私はまず、何をすべきか。
何を見て、どう判断すべきか。
『周り見ろ』
手で大きく頬を叩いて、私は大きく振り返った。
「轟くんも夜嵐くんも、すごい人です。でも、轟くんと夜嵐くん……なんだか確執があるみたいでした。」
「よくわかるな。」
「勘です。でも……尚更!私の出る幕じゃないですよね!仲直りしてもらわなきゃです!ボスは任せます!」
「勘…かよ。」
これで、正しいのか分からないけれど。
正解かわからなくても、不安でも。
今は勇気を持って、進むしかないんだ。
「真堂さ……真堂“先輩”も、はやく一旦遠くへ」
「ばーか。俺は、揺れには耐性あんの。そんな感じで、騙し討ちで足止めを狙ってる。…ここまで言えば、バカでも分かるな。」
「ば…」
彼のそんな棘も、もう気にならなかった。
嘘の姿で接されるよりはずっと良い、なんて思えてくる。
小さくこくんと頷いて、剣をぎゅうと握り直した。
「…真堂先輩、私、そっちの方が好きですよ。爽やかイケメンより、ずっと似合ってます。」
「言うじゃないか。」
「お互い様です。じゃあ!」
「あぁ。」
私は真堂先輩に、背を向けた。
本当は、ギャングオルガの制圧に行った方が、彼らの手助けへ行った方がいいのかも知れない。
後悔するのかもしれない。
でも、これは私が決めたことだ。