第37章 Let's struggle!
「こっち来ないでください!!」
親指を噛みちぎって、血を垂らす。
もう見慣れてしまったそれが、怖いような、憎らしいような。
私が剣を片手に駆けると、後ろから鋭い声が聞こえた。
「邪魔なんだよ!!みんなを遠くへ避難させろ!はやく!!」
「真堂…さん…?キャラが……」
さっきの爽やか優しいイケメンはどこかに吹っ飛んでいってしまったようで。
絶妙なキャラ崩壊に驚きつつ、彼の言葉を噛み砕いてハッとする。
「あっ、えっ、はいっ!!」
彼の個性はとっても影響の大きなもの。
確かに私がここにいたら邪魔だ。
他に、やれることを探そう。
「皆さん!!さがって!あぶないです!」
私の個性でできること。
私がみんなに出来ることは。
「はぁぁああああ!!」
本日2度目の無茶だ。
また、怒られちゃうだろうか。
でも、今は関係ないから。
噛みちぎった親指の傷は、だんだん裂けて広がって。
血はとめどなく流れ出ていく。
初めて、誰かを守るために使った気がする。
救護所を護るように。
みんなを、護るために。
BOOM!!
私は今まで作ったのよりずっとずっと大きな大きな壁を作った。
「はぁ、はぁ…。」
『うぉっ…!』
放送から、なんだか驚いたような声が零れる。
でも私の耳はもうあんまり機能していなくて、私はただぼーっと赤くキラキラと輝くそれを、見上げる。
ふらりとふらつく足は、今にも膝をつきそうだ。
結構使っちゃったな、なんてぼーっとしてそれから足を反対方向へ向けた。
私は、血液の塊をずりずりと引きずって、貧血で虚ろになった目で歩いてる。
その引きずった跡は、赤い線路のように連なって。
傍から見れば、きっと敵なんだろうな。
それも、やばいやつ。関わりたくないタイプ。
だってこの個性だって、敵からので。
中身もそっくり敵なのかもしれないって、時々怖くもなる。
でも、違うって、信じなきゃ。
それに、
「今は、関係なぁぁぁあい!!」
今は、こうするしかないし。
結構なヤバさのまま、結構な敵っぽさのまま、眉に力を込めて剣を振り上げた。
「うわぁぁあ!!」
敵役の方の怯えた声に、少しだけ申し訳なくなった。