第37章 Let's struggle!
「誰かいますかー!!」
救助される側としては、どんな気分なんだろう。
黙々と要救助者を探しながら、そんなことを考えていた。
ヒーローが来て、ほっとするのだろうか。
安心するのだろうか。
じゃあそれまでは、不安でたまらないのだろうか。
それならば。
救助の立ち回りに慣れていない、ひよっこのひよっこである私に出来ること。
それって、安心させること、だけなんじゃないのかな。
楽しいから、面白いからの笑顔ではなくて、
人を安心させるための、優しい笑顔を。
ヒーローの、笑顔を。
「もう平気ですよ!」
そんなことを考えて笑顔を作った。
「ありがとう。」
うずくまった少年は少しだけ安心した顔で、“ありがとう”と、そう言った。
きっと、この時私の心に拡がったものの匂いや味や名前を、大人になっても、たとえヒーローになった時でも、説明出来ないと思う。
それくらい素敵な色が、私の心には拡がった。
私はじめて、人を救けた。
“ありがとう”って、言ってくれた。
今までもありがとう、って言われたことあった。けど、“ヒーローになりたい”って願ってから、はじめてなんだ。
嬉しくなって、涙が出そうになって。
でも約束を思い出したから、我慢した。
「避難場所!一緒に行きましょう!」
「う、うん。」
彼の手をとって、歩き出す。
大丈夫、大丈夫って、語りかけながら。
そんな時だった。
近くの壁から、耳を劈く破壊音がしたのは。