第36章 ステレオ
私の両目は、まだ彼らを捉えている。
ボールは次々と私たちをめがけて飛んできて。
皆は完成させた必殺技で順番に防いでいく。
響香ちゃんが地面を抉って
三奈ちゃんが手から出るあれで壁を作って。
そのカッコいいのを横目で見て、私も慌てて親指を噛みちぎった。
血液が垂れて形を作っていく。
剣を両手で構えてそれで、
来たる攻撃を待った。
攻撃は、
「最大威力!!」
「やっ、うぁっ!?」
KABOOM!!
下から。
地面が破裂した。
真っ逆さまに、落ちた。
「いったた……」
砂煙が立ち上って、なにも見えない。
みんなとも分断されて、瓦礫のやまには私だけ。
いっきに不安が膨らんでいく。
今のは個性かな。
強いな。
全国の強い人が、たくさん。
手の中の剣を握る力が強くなっていく。
口にぎゅっと力がこもる。
そんな瞬間だった。
BOM!
「わっ!?」
またも襲ってきたのは下から。
蜘蛛の糸のようなものが地面から飛び出してくる。
私は足に力を入れて飛び上がり、あたりを見下ろした。
「よけられたな。」
「手のあれが個性だな。」
「ああ、テレビで見たよ。」
5…6……7…もっと!?
たくさん、たくさんいる……
しかも、囲まれてる
長い跳躍を終え、剣を構える。
ぽたん、と冷や汗が地面へ吸い込まれていく。
どうする、どうすればいいんだろう。
じりじりと、近づいてくる彼らをにらみつけたまま、私は動けなかった。
少しでも動いたら、くる。
全神経が、冴えわたる。
これまでにないくらい。
私は剣をおろし、地面へ突き立てた。
「かかってこい!」
私のその煽り文句は、彼らの足を動かした。