第36章 ステレオ
天井が轟音を上げながらバカンと開いた。
呆気にとられて空を見上げた。
空は青く、どこまでも深い。
「よしっ」
むんっと腕にぐっと力がこもった。
スタッフさんからターゲットを受け取ってぎゅっと握りしめる。
このターゲットを体につけて、これにボールが当たって、3つとも光っちゃったらアウト
反対に、2人脱落させたら勝ち抜き
そんなルールを頭の中で反復して、ぺたぺたと体にはっていく。
腕と、太ももと、それから脇腹。
なんどもなんどもそのターゲットの形を指で確認した。
指、震えてる。
手、冷たい。
頑張らないと。
「皆!あまり離れず一かたまりで動こう!」
大きく聞こえたその声に、私の心は大きく安心する。
勝己くんや轟くんはタッタカタと走って行ってしまった。
少しだけ不安があおられて、それでも追うわけにもいかなくて。
迷うつま先は、ただ彼を追う。
少しずつ小さくなるカウントダウンと、
少しずつ大きくなる鼓動
ざっざっと響く砂の音
それだけで耳の中はいっぱいで。
「START!!」
また新しいその音が、私の耳をつんざいた。
それと同時に視界を埋めたのは、
たくさんの
人、
人、
人。
ぎょっと度肝を抜かれて、目を見開いた。
「杭が出てればそりゃ打つさ!!!」
あの彼もさっきはあんなにやさしげだったのに、いまはあんなに真剣で。
蛇ににらまれたカエル。
井の中の蛙、大海を知らず。
そんな言葉が頭に浮かんで。
でも引かないように、
ひるまないように。
「締まっていこう!!」
うん、と小さくうなずいた。
井の中の蛙、大海を知らず。
されど空の深さを知る。
そんな風に続いているんだとか。
どこかのだれかが負け惜しみで作ったんだとか。
負け惜しみでもいい。
私は、空の青さも深さも知ってる。
みんなの凄さを、知ってるもの。