第35章 ZERO TO HERO
嵐のように現れた彼は、本当に“夜嵐イナサ”という名前なんだとか。
凄く成績優秀で、雄英高校とはるくらいの凄い高校、士傑高校というところの人なんだって。
みんなはそれにざわついていたけれど、
「安藤さん!安藤さんっすよね!!」
「ひょぇ」
なぜだか目が合ってしまって手をぐーっと握られ至近距離であの大きな声をぶつけられ続けた私は...
「テレビで見ましたァ!!大変でしたね!!一緒に頑張りましょう!!」
「あわ…あえっと……」
泡を吹きそうになって、話なんて聞けなかった。
「ひよこちゃん!!…大丈夫?なんか嵐に吹っ飛ばされそうになってたね…。西怖いねぇ。」
「なんとか…なんとか耐えた……!へ、へいき。」
お茶子ちゃんに助け出されてもなお、私の目はぐるぐると渦を巻き続けている。
「変だが本物だ。マークしとけ。」
先生の冷静なその言葉に、私は混乱しながらも納得した。
なんとなく、わかる気がする。
彼はなんとなく、漠然と、凄い気がする。
彼の手、熱かった。
緊張して冷え冷えの私の手とは全然違った。
そんな私の手をもう一度摩っていると、また違う人達がやってくる。
「イレイザー!?イレイザーじゃないか!」
「!」
ハツラツとしたハリのある綺麗な声。
そしてそれについてくるのは、カラカラと楽しげな笑い声だった。
その登場に、相澤先生が少し嫌そうな顔をしたのに、私は気づかなかった。