第35章 ZERO TO HERO
「へっへっへ!」
「三奈ちゃーん!!だめぇ!!」
【❤❤❤出久くん❤お疲れ様❤❤❤】
そんな真っ赤っ赤なメールが送られるのを阻止すべく、私は必死に手を伸ばした。
そんなメール送っちゃったら、私の方が真っ赤になって爆発しちゃう。
「もー。やーめなさい!」
「あーん!」
ひょいっと携帯を取り上げてくれたのは響香ちゃん。
「響香ちゃーん…。ありがとうー……ほぉ…」
「芦戸からかうの大概にしなね。」
「だってぇ!」
携帯を胸にぎゅっと抱きしめて、ほぉっと息をつく。
息をついてもなんでか心は落ち着かなくて。
目をそろーっとお茶子ちゃんに向ける。
なにを話しているかは分からないけど、梅雨ちゃんとお話してる。
真っ赤な顔で、
あの顔は、知ってる。
「恋だ」
ドキン
「こら芦戸!反省!」
「えぇーん!だってきゅんが足りないよォ!!」
ぎゅうっと携帯を握りしめて、目もぎゅっと瞑る。
どうしよう。
私、どうしよう。
パッと携帯を開いて、カチカチカチ
真っ赤なハートを消していく。
【❤❤】
ボタンを押す指が止まって、またまた始まるにらめっこ。
祈るみたいに携帯を握りしめて。
目の端っこではお茶子ちゃんは中に浮いている。
心臓はばっこんばっこん止まらなくって。
カチカチカチ
でも、
ハート…消したら、負けちゃう気がする。
あっぷっぷ!
【お疲れ様はー】
カチリ
「あっ…あぁっ!!」
しゅーん、という音と一緒に手紙のマークが小さくなっていく。
ハート、付けれなかった。