第35章 ZERO TO HERO
「あ、あのう……えっと…おじゃま、しまーす。」
ぎぃっと重たい扉をこじ開けて、ちろっと中をのぞき込む。
ごちゃごちゃ、がちゃがちゃ。
色んなものが散乱した部屋に私は恐る恐る足を踏み入れた。
『眼帯、外してみたら?』
出久くんのその予想外の言葉に、私はぽかんと口を開けた。
『外して、みたら…って、』
だって今まで外したくても外せなかったものだ。
そんな軽く、言えるものではなかったし、
『開発工房って、ところがあるんだよ。』
『かいはつ?』
『僕もお世話になってるんだ。ちょっと変な感じの人…がいるんだけど、すごく頼りになるんだ!』
『変な…』
出久くんの真剣な言葉にたじろいで、出久くんと同じことを繰り返し口に出すことしかできなかった。
『そこに相談してみたらどうかな。眼帯のこと!』
彼の瞳の中に、希望を見出してしまって、
「ごめん…ください…!」
そして現在、出久くんに押し負けてここにいる、というわけで。
どこかからガサゴソと音が聞こえる部屋に、私は立ち尽くしている。
「あ、あの!すみません!コスチュームの改良につい」
「コスチューム改良っ!!私興味あります!!」
「ひょぐっ!?」
極力大きな声で気づいてもらおうとしたら、それよりも圧倒的に大きな声が私を後から襲った。
びっくりしすぎて震えた。
恐る恐る振り返ってみると、そこにはピンク色の髪をした、ぱっちりお目目の女の子。
とっても汚れた作業着を身にまとっている。
「あ、あの、私」
「コス変ならお任せ下さい!!で、なんですか!貴方の個性!!」
「いや、そのっ」
「さぁさぁさぁ!!」
「えっと」
圧がすごい。
彼女の勢いが凄すぎて、私はたじろいだ。
一歩引くとまた一歩。
もう一歩引くともう一歩。
彼女は近づいてくる。
ついに壁まで到達した時、先生の声、さながら鶴の一声、が部屋に響いた。
「おい発目!お前圧がすごいんだよ!」
発目、さん。
目の前でランランと目を輝かせている発目さんは、私の手を握りしめたまま「仕方ないのです!!」と叫んでいた。