第35章 ZERO TO HERO
「もしかして、ひよこちゃん…」
「へぁっ?」
下に向けていた顔を、その声の方へ向けた。
まだ熱い頬が恥ずかしくて、手で頬を覆ったまま。
「個性の、相談?」
ばちりと彼の真剣な目と目が合って、
私の心臓はぎゅんと縮こまった。
「そっそうじゃ……そう…じゃよ!うんうん!」
「じゃよ?」
変なことを口走って、
それから首が吹っ飛びそうなくらい頷いた。
「そうだよね……僕も、まだまだだけどさ。一緒に、考えようよ。」
こくんと頷いてそのまま下から彼を見上げる。
そこには大好きなあの笑顔があって
こっちばっかり、
「うん!一緒に、考える!」
嬉しくなっちゃって。
一緒にソファに座って、
いっぱいいっぱい言葉を出して
「出久くんのその個性って……」
「ひよこちゃんの個性はさ、」
「へ?」
「人から、渡されたもの…なんだよね。」
「あ…えっと、うん。押し付けられ…たって、感じかな。確かに、その…良い感じはしないけど…貰ったもんは使ったろと思ってさ。」
いっぱいいっぱい教えてくれて、相談して。
それでも出久くんの個性のことだけは、教えてくれなかった。
「あ……ひよこちゃん。」
「ん?んにゃぁっ!?」
なんで、個性のこと教えてくれないんだろうってぼーっと考えていると、
ぬっ
と横から伸びてきた腕に、私は腰を抜かした。
その手はそのまま私の顔へ向かって、
私の右目へ近づいてくる。
「こっち向いて。」
「ええっ!?」
その傷だらけの指は、私の眼帯をすっとさすって、
それだけして帰っていく。
目を閉じていたものだから、その指がどれだけ大っきいのかゴツゴツなのか分からなかったけれど。それでも、眼帯に揺れが伝わるたびに私の心臓は大きく跳ね上がった。
「眼帯、邪魔じゃない?」
「へぁ?」
「眼帯、とってみたら?」
「へぇ!?」