第34章 〈番外編〉君は夏に微笑む
「お神輿もう終わりかな。楽しかったね!」
「うん!」
「たのしかった!」
「ぼくもやりたい!」
「もうちょっと大人になってからね!」
お神輿を見て盛り上がった私は、きょろりと改めて周りを見てみた。
耳をすませば、ぽかぽかした声が聞こえてくる。
「あっやだ出久くん!こんなにケガ増やしてー!心配させないで!」
「ごっごめんなさい。」
「そうだぞ緑谷くん!」
「素敵なお花ですね!」
「そうなの!あっ!あなた…!体育祭見たわよ!凄かった!」
「あぇ!なんか恥ずかしいな…」
「これおまけ!」
「おっ…でも、」
「ほら育ち盛りなんだから遠慮しない!」
「…ありがとうございます。」
いっつもお買い物をしていた
いっつもいってきますとただいまを言っていた
おかえりを言ってくれていた
この、大好きな場所に、
みんなが居る。
そんな景色を俯瞰して、なんだか胸のあたりがさわさわするのを感じた。
しばらくぼーっとそれを眺めて、音が少しだけ少なくなったのを感じ瞬きをひとつする。
さっきの声が、聞こえない?
なんで____
「ねーちゃん!おみこしきた!」
「えっ?」
「わーい!」
「わっしょーい!」
終わったと思っていたお神輿の声が、向こうからやってきた。
聞いたことある声を、引き連れて。
「あれっ!出久くん!鋭児郎くん!?電気くんも、範太くんも!!わぁ!天哉くん!轟くん!わぁ!峰田くんも!!」
笛の音が晴れわたった空に鋭く響いている。
打ち鳴らされる太鼓も聞こえる。
お祭りだ。
夏祭りだ。
いっつもおまけしてもらったお肉屋さん
お小遣いを貯めて行ったおもちゃ屋さん
毎日お世話になった八百屋さん
優しい優しいお花屋さん
本当に、ここにいられて良かったって
心から
羽織ったはっぴを握りしめ、それから声を張り上げる。
「わっしょーい!!!」
その声は、大きく大きく響いていった。