第34章 〈番外編〉君は夏に微笑む
Side 切島鋭児郎
夏でお祭り…って聞いたら想像するのはあれだ。
夜
屋台の光がオレンジ色キラキラ光って
みんな浴衣着て
最後は花火が上がるあれ。
でも、今目の前では
「わっしょいわっしょい!!よいしょー!よいしょ!」
と商店街のハッピを着てお神輿の応援で大盛り上がりの安藤が。
思ってたのと、少し違った。
ちょっと安藤の浴衣を期待したのは、よこしまだったのだろうか。
空では月でも星でもなく、オレンジ色の夕日が輝いている。
屋台はたくさん出ていて、みんなは大喜びで買いに行ったり、商店街の人々とお話したり。
思っていたのと少し違ったけれど、それはそれは楽しい時間だった。
「鋭児郎くん!楽しい?」
「おう!」
「そっかー!よかった!」
キラキラ笑う安藤をみて、俺はもう一度楽しさを強く噛み締めた。
安藤は安藤の家の子供たちと商店街の人達のお手伝いをしたり、子供たちと一緒にお神輿を見たり。
寮に入ることになって、日常ではなくなったことを、この非日常で楽しんでいる。
そんなふうに見えた。
じゃあ俺も楽しもう。
そう、歩き出す。
「あ!鋭児郎くん!!こないだはありがとうね。」
「あぁ、この間の!」
「なあにどうしたの?」
「あー、この子!切島鋭児郎くん!ひよちゃんの友達でね!あっ、体育祭!みたよー!」
「あー!みたよ!凄かったねぇ!」
歩いているだけで、商店街の人達は明るく笑顔で語りかけてくれる。
ぽかぽかと暖かい、優しい空間。
そんな空間だったから、安藤はあんなに優しいんだ。
「鋭児郎くん!楽しんでくれてるかい?」
「はいっ!ありがとうございます!」
「よかった!」
にこにこと話しかけてくれて、それからあっ!となにかに気づいた顔をして、期待いっぱいに俺を見る。
「あのさ、お神輿!やらない?お友達も一緒にどうかな?」