• テキストサイズ

夢を叶える方法【ヒロアカ】

第33章 A world beginning with you


Side 切島鋭児郎


パチリパチリ


久しぶりに見たその大きな瞬きは、キラキラと世界を揺るがすほどに見えた。


「どう、驚いた!?安藤ー!」


いつも通りのはじける笑顔で声を上げる芦戸に、安藤はまたパチパチと瞬きをした。


「みんなで準備してたの!」
「ひよこちゃんが戻ってきたらびっくりさせてやろうってね!」


瞳に涙を浮かべたままの安藤はポカーンとしている。

もしかしてまだ、状況が飲み込めてないのかもしれない。

「あれ?おーい、安藤?」



「こ、コシが……抜けちゃった……」



その言葉を聞くやいなや、みんなパッと安藤に寄り集まって手を引っ張った。


『安藤、泣いちゃうに一票!』
『いや、“どうして起きてるの?”だろ!』
『うわー!言いそう!』

そうやってみんなで散々予想した第一声は、『コシが抜けた』だった。



今朝、相澤先生から

『安藤が帰ってくる』

という連絡が入った。

皆は大きく湧いて、それから、どうしようかと少しだけ困惑した。


どんな顔して会えばいい?
安藤はどう思うかな。
なんて言えば安藤は。


祝福すべきなのか、慰めるべきなのか。
湧くべきなのか、静まるべきなのか。

俺たちには分からなかった。


どうしようか、とはこういうことだ。


そんなふうに困惑していると、鶴の一声。

予想外なあいつの声だった。


『いつもみてーに馬鹿晒して騒げばいいだろ。クソひよこに気ィ使う必要なんざねぇ。』


いつもと同じ、乱暴な口調。
少しだけ違うのは、安藤を“ひよこ”、と呼んでいること。

その声に皆振り向くと、今度は緑谷も声を上げて。


『うん…楽しくしてくれた方が、よろこんでくれたほうが、絶対ひよこちゃんは喜ぶよ。』


そばにいたからこそ、分かることだった。

確信めいたその言葉に、俺はちょっとだけ嫉妬した。

だから俺も負けじと声を上げて、


『なぁ、じゃあサプライズしないか?』


そう言ったのが、この計画の始まりだった。



皆に手を引かれてやっと立ち上がった安藤は、少しだけ泣きそうな顔をしてから、ぐっと下を向いて、それからこちらに顔を上げる。



その笑顔は、日向みたいにキラキラとしていた。



/ 728ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp