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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第32章 夢を諦める方法





「そ、それは…。」


その言葉に、私の温度は急転直下。
笑顔は一瞬で消え去った。


ずっと目の端にあったけど、見えないふりをしていたその塊は、

机の上の、その塊は、

私の大切な


「昨日、おばさんが置いてって、くれて…。」



昨日、出久くんが帰ってから、


『私、ヒーローに…なりたい。でも、なっていいのか…なれるのか…わかんない…。…雄英に、居ていいのかもわかんない…。』


おばさんに弱音を吐いた。

そしたらおばさんは、その手紙をくれて

『これ、ひなたから預かってたの。ひよこの大切な時、困った時にって。きっと、今がそうなのよね。あなたに渡しとくわ。』


真っ白のソレは、綺麗で、大切で、大切すぎて、触れていいかも分からない。


「まだ、読めてないの。」

下を向いてそう呟く。

「読んだらなんか……壊れちゃう気がしてね。」


お母さんからの大切なもの


私が触れたら壊れてしまう気がして。


「怖い。」


胸のあたりをきゅっと掴んで、絞るように声を出す。

そしたら勝己くんは、


「クソくだんねぇ。」


って、言った。

それが誰に向けてなのか何に向けてなのか、すぐ分かってしまう。
そんなに長い間一緒にいたんだなぁって、思った。


「それ食え。もう行く。」

「えっ」


剥いたりんごを指さして、勝己くんは立ち上がる。


「もう、行っちゃうの?」

「学校だよ。遅刻さす気か。」

「あっ、そっ…か。」


そういえば制服だった。
なんて思って。

あのクラスのこと、思って。

少しだけ寂しくなった。


「いって…らっしゃい。」

「…」


ずんずんと進んでいく背中を見ながら、私は小さく手を振った。

姿が見えなくなって、私はぎゅっと、手を握る。


手紙のとなりにおいてあったガラスの器を手に取って、しゃくりしゃくりとりんこを食べる。

かわいいうさぎは端に寄せて。

りんごは甘酸っぱくて、優しくて。


それからちらりと手紙を流し目でみる。


これが読めるようになるには、


多分月が落っこちてくるぐらいの出来事がないと。


きっとそうじゃないと、怖くて読めない。


そんな突拍子もないことを思いながら、今度はうさぎを口に入れる。


うさぎは口の中でしゅわしゅわ跳ねて、

さっきよりちょっぴり渋かった。


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