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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第32章 夢を諦める方法


Side 緑谷出久



「ちょっと、電話…してくる…!」

「うん。」


まだぽけっとしているひよこちゃんを置いて、病室を出る。


なんで僕が泣いてるんだろう。

廊下に出て、それからごしごしと目を擦る。


ケータイを取り出してそれから、タンタンと番号を打ち込む。

受話器のマークを押して、それからすうっと息を整える。



「もしもし、はなさん。」

『あら、出久くん。どうかした?』

「ひよこちゃんの、目が覚めました。」


そうやって要件を言えば、受話器の向こう側で息を呑む音がした。

胸が、きゅうっと縮こまる。


『ひよこっひよこはなんて!?』

「まだ……あ、頭が回らないって…。」


僕は咄嗟に嘘をついた。

だって、こんな声に、“会いたくないって言ってた”なんて言えるわけ、ない。


『行くっ!今すぐ行くわ!!』

「っ…で、でも」


その言葉に、僕は少し慌てる。


『ひよこに会いたいの!!今すぐ行く!』

「っ!」

『伝えてくれてありがとうね!』


ぶっつり、

と切れたケータイを手に、僕は唖然とした。


慌てると同時に気持ちはちょっぴり軽くなって、


彼女に僕は何をしてあげられるかな。

なんて考えた。


ケータイに表示されたあのヒーローの名前を押しそうになって、止める。

オールマイトだって大変なはずなのに、どうすればいいって、相談していいわけ、ないし。


少しだけ小走りに病室に入ると、彼女は今度はテレビを見ていた。


「オールマイト、引退しちゃったの…?」

「っ……うん。」


ニュースで持ちきりになっていたその話題を、彼女は目をまん丸にして見ていた。


「……私の…せい…かな…?」


ひよこちゃんの声と肩が、少しだけ震えているのが見えた。


「それだけは、絶対違う!!」


大きくなってしまった声に、彼女が振り返る。


その目は酷く怯えていて。


「私が…捕まっちゃった…から?」

「っ…違うよ!」


そのニュース番組では、誘拐されたひよこちゃんのことにも触れていて、慌ててテレビの電源を切った。


「私…」


震えている肩を押さえて真っ直ぐに。


「絶対違うに決まってる!これ以上“ひよこちゃん”を貶したら、僕が許さない!」


ひよこちゃんは大きな瞳をもっと大きくして、こちらを見ていた。


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