第31章 A world without you
Side hero
「先制必縛」
濛濛とした煙のなかへ、彼らは飛び込む。
「ウルシ鎖牢!!」
人気急上昇の若手実力派。
シンリンカムイは指から根を伸ばし、そこにいた敵を締め上げる。
「木ィ!?んなもん…」
「逸んなよ」
その根を燃そうとする荼毘に、弾丸のように飛んできたのはグラントリノ。
そんなヒーローオールスターズは、壁を壊してやってくる。
壁を壊したのは、オールマイト。
ヒーローの見本のような姿だった。
「もう逃げられんぞ敵連合…何故って!?」
怒気をはらんだその声は、“恐れ知らずの笑顔”から。
「我々が、来た!!」
彼はお決まりのセリフを吐き、奴らをにらむ。
扉の方からもヒーロー、エッジショット。
敵連合は、完全に包囲されていた。
ヒーロー側が完全に優位に立っているなか、オールマイトの心は騒いでとまらなかった。
ここにいるはずの彼女がなぜ居ない…!?
その不安を表に出さぬよう、“恐れ知らずの笑顔”のままに彼は告げる。
最高のヒーローの言葉を。敵を倒す、ヒーローの言葉を。
「ここで終わりだ、死柄木弔!!!」
そんなカッコイイヒーローのセリフに、死柄木の目も怒りで揺れる。
「終わりだと……?ふざけるな…始まったばかりだ」
「安藤少女はどこに居る!!!」
「…正義だの…平和だの…もうたくさんだ…!こんな掃き溜め、ぶっ壊す…」
オールマイトの言葉が耳に入らなかったかのように彼は虚ろに声を漏らす。その目からはまだ光は消えておらず、強く、ギラギラと目の前の“敵”を睨み続けている。
「黒ぎっ…」
「うっ…」
死柄木が黒霧を呼ぼうとしても、彼はエッジショットにより一瞬にして気を失って。
死柄木は己が完全に不利であることにやっと気がついただろう。
オールマイトはそう踏んでもう一度声を上げる。
ワンフォーオールを持つ者としての、平和の象徴としての言葉を。
そして死柄木も、憎悪に目を光らせて、全ての憎しみを込めて叫ぶ。
「彼女はどこに居る…奴はどこに居る!!!」
「お前が!!大嫌いだ!!!」
その声が合図だったかのように、空間から泥が溢れ出る。泥とともに、異形、脳無も。
そして、
守るべきだった、彼女も。