第31章 A world without you
「見えた、な。」
「なんか……おあつらえ向きって……感じだね。」
『……。』
優に言われた通りに進んだそこは、ビルだった。
ボロボロの、多分廃ビルで。
「あれ…ひとだか……」
緑谷はそこまで言って目を大きく見開いた。
「ひっ…ヒーローっ!?」
俺もそちらを向いてギョッとする。
テレビで見たことあるようなヒーローが大量に、そのビルの前には居た。
「なに!?」
「どっ、どうしよう…。」
「優どうする!?」
思わず通信機の先に答えを求めると、優は案外冷静に言葉を返した。
『……。落ち着いて。作戦は中止。帰ろう。ヒーロー、多分乗り込むんだよ。ヒーロー達はプロで本職だ。そっちに任せよう。邪魔はしちゃいけない。』
優の声に、それまで黙っていた爆豪は声をあげる。
少しだけ、汗を浮かべた顔で。
「このまま、引き下がれなんて言わねえだろうな優!お前ならそんな情報くらいハッキング出来たんじゃねぇんか?分かってたんだろ!」
「お、おい爆豪落ち着けって優は悪くないって。」
焦りを浮かべる爆豪に、俺は宥めるように声をかける。
『…わかんないよ。分かってたら危険だろ。』
「このまま引き下がれるかよ!!」
『っ…そうするしかないんでしょ!?こっ…こんな時なんだから少しぐらい言うこと聞けよ!ワガママ言うな!』
「んだとこのガキ!ぶっ殺すぞ!」
双方余裕はない様子で、こちらの心の焦りもどんどん膨れ上がっていく。
優がこんなに怒鳴るなんて思ってもみなかったし、
そんなに余裕がなかったんだって、初めて気づいた。
だってまだ、中1だもんな。
「おいやめろよ!」
「かっちゃん!優くん!」
「往来だぞ!やめたまえ、」
「くそっ!!俺はっ…!!」
「ちょっ、爆豪!!」
爆豪は通信機を奪い取ると、
BOOOOM!!
通信機を、爆破してしまった。
もう、めちゃくちゃだった。
もうわけが、分からなくなって。
「爆豪くん!優くんがどんな思いで!!」
「あ゛ぁ!?」
飯田が爆豪に掴みかかって、
SMASSSSH!!
その時、そんな轟音が響き、俺たちは思わずそちらを向いた。
オールマイトが、壁を破壊した音で。
ぐちゃぐちゃになった俺らは、呆然として。
そして思うんだ。
あぁ、プロだって。