第29章 〈番外編〉青い心は揺れ動く。
「…たりない…。…もっと……もっときゅんしたいよぉ!!…もっと私もきゅんしたい…!!」
そう言ってぐったりと倒れ込むのは三奈ちゃん。
砂漠で倒れちゃった旅人のようで、枯渇問題だっていうのはあながち誇張でもなかったようだ。
「うーん…あっ!じゃあさじゃあさ!」
そうやって元気よく声を上げるのはやっぱり透ちゃんで、三奈ちゃんはハッと顔を上げる。
「1日だけ変われるなら誰になってみたい!?男の子の中で!」
「「変わる?」」
みんなならんで首を傾げて透ちゃんを見つめる。
透ちゃんは腕をブンブン振りながらテンションの高い声で捲し立てた。
「ほらー!使ってみたい個性とか!!」
「個性…!」
そうやって期待のこもった言葉をもらしたのは、ひよこちゃんだった。
ハッとしてそちらを見れば、キラキラと目を輝かせた彼女がいた。
ちっちゃい子が大好きなヒーローを見たときみたいにキラキラピカピカ無邪気な顔。
「それだったらうち、上鳴がいいな。あのうぇーい状態を一回でいいから体験してみたいな。」
「私瀬呂ー!ビューンって出してみたい!」
みんなが次々と言っていく中で、視界の中にいるひよこちゃんは、うんうんと全てに大きく頷いていた。
私は…。
やっぱり彼かなぁとあの凶悪な顔を思い浮かべた。
「私…爆豪くん。体育祭のとき戦ってめちゃめちゃ強かったやん。あれ、一回体験してみたいなぁ。」
私も、とそう言ってみれば、ひよこちゃんは首がとれそうなほど頷いていて、赤べこみたいだ…なんておもった。
「じゃあひよこちゃんは?」
見かねて話を振ってみれば、ひよこちゃんは今度は興奮で顔を赤くしてベラベラと信じられないほど饒舌に喋り出した。