第29章 〈番外編〉青い心は揺れ動く。
「あのね、あのね、まずね、お腹からビーム出してみたい!キラキラでかっこいいし、どんな感覚なのか気になるなぁ。三奈ちゃんみたいにじゅわって出してみたい!梅雨ちゃんみたいにすいすい泳いでみたい!あとね、ビューンってエンジン使って足速くなってみたい!ふわふわ浮いてみたい!それからね、尻尾羨ましいなぁ。あっ!電気もビカビカしてみたい!!自分の体が硬いのってどんな感覚なんだろう!動物とお話出来るのもかっこいいよね!それから!」
「安藤!!ストップ!!」
「はっ…!」
耳郎ちゃんがぽんと肩を叩くと、ひよこちゃんはテンションの上がった声を止め、ハッと前を向いた。
「…あれ、私…。」
「もう、安藤どんだけ好きなの!?凄いね!」
「緑谷みたいだったよ。」
「いやぁ……」
さっきまでブンブン振っていた腕を頭にもっていってポリポリと恥ずかしそうにかく。
「みんな…憧れなんだ……かっこよくって。」
その顔に嘘もお世辞も何一つなくて、キラキラと輝く瞳はどこまでも澄んでまっすぐだった。
そして、ひよこちゃんの個性を考えて、ハッと気づく。
私、ひよこちゃんの個性、見たことないや。
「そういえば、ひよこちゃんのこせ……」
ここまで声が出て、ピタリと止まる。
『ふざけて聞いたりすんなよ。』
あの、先生の冷たい声が頭の中に響いたのだ。
なんで、なんやろう。
「?お茶子ちゃん、どうしたの?」
まっすぐ聞いてくるひよこちゃんに、私は何も言えなくなって。
「…ううん。なんでもない。」
「?」
聞いてはいけない気がして。
私はくん、と口を噤んだ。