第29章 〈番外編〉青い心は揺れ動く。
「…笑顔が…すてきで……それから…」
「ちょっ、ちょいストップ!どんだけ好きなの!!」
その声に、伏し目がちに言葉を繋いでいたひよこちゃんはハッと顔を上げた。
「はっ…!?」
何かに気がついたように彼女の顔はまた真っ赤に染まって、その赤を枕に埋める。
「…わすれてください。」
くぐもって聞こえてくる照れた声は、まっすぐで。
きゅっと縮こまったその姿は、かわいい女の子で。
思わず自分を見下ろした。
おっぱいが、見える。
恥ずかしい。
なんで私今、おっぱいのことなんか考えて。
恥ずかしい。
そこそこ大きいそれが、なんだか急に恥ずかしくなって、私は枕を抱きしめて見えないようにした。
「じゃあ、きっかけは?」
「きっ……かけ…」
三奈ちゃんの容赦のない言葉に、ひよこちゃんは顔を上げる。
ひよこちゃんが桜色のかわいい唇を開いたのが見えて、私はぎゅっと目を閉じた。
「助けて、くれたの。」
目を薄くあけて見てみると、真っ赤な顔で一生懸命語るあの子が見えて、またつむる。
「助け?」
「ちっちゃいとき私、いじめられっ子で、弱っちかったから。その時に出久くん、助けてくれて……。」
「緑谷さん、流石ですわね。」
「で、緑谷、いじめっ子をやっつけちゃったんだ!!」
「…ううん。ぼこぼこにやられちゃった…。」
「ええ!!」
「なにそれ!」
「それで好きになったの?」
「それでも、彼を好きになってしまったのよね。」
梅雨ちゃんの優しい声に、私は目を開けた。
正面にいるひよこちゃんは小さく微笑んで、コクリと頷いて。
そんなひよこちゃんに、みんなは破顔する。
たったひとり、素直に笑えない私は、ぎゅうっと下を向いた。
「どうした麗日ー?元気ないね。」
「お茶子ちゃん、どうかした?」
そんな私に気づいたみんなは、声をかけてくれた。
「なっ!なんでもないよ!!ただ…えっと…」
急に引き戻されて、私はハッとする。
ワタワタと慌てて理由を考えて、それから
「そんなふうに、好きって言えれるの、凄いなぁって……思って。」
そうやって、こぼした。