第29章 〈番外編〉青い心は揺れ動く。
それからも会話はコロコロと転がっていって、
飯田くんは?
真面目すぎー!
上鳴は?
チャラすぎ!
峰田は?
論外!!
爆豪は?
殺される!!
とまぁ、男子諸君は女子の言葉に大破されていく。
そして、会話はコロコロコロコロ転がって、そして辿り着いたのは、やはり彼だった。
「じゃあ緑谷は?」
その名前が出た瞬間、心臓はどっくんと大きく音を立たて跳ね上がる。
正面で体育座りをしていたひよこちゃんも同じみたいで、顔は一気にゆでダコのようになった。
「安藤意識しすぎー!」
「ちっ、ちが……わないけど…」
と、尻つぼみに否定する。
そんな姿に、私はやっぱりもやもやとした。
「で、デクくんのこと…どうして好きなの?」
「そっ……それは……。」
どうして、彼を好きなのか。
彼には悪いが、ぱっとしている訳でもないし、特別イケメンって訳でもない。
それなのに、そこまで一途に彼を好きでいられる理由を知りたかった。
彼女は小さいけれどまっすぐな声で、真っ赤な顔を枕からあげて、ゆっくり喋り出す。
「…すっごく……優しくて…」
「うんうん。」
「そうね。」
「…まっすぐで…」
「わかるわかる。」
「ふむふむ」
「…真剣で、真面目で……」
「うんうん。」
「それでそれで?」
「…かっこよくって……」
「う、うん…?」
「ふんふん。」
「ヒーローだか……ひ、ヒーローが…すっごい好きで…」
「んん…?」
「え?」
放っておけばいつまでも続きそうなその言葉は、なぜだか全部胸に突き刺さった。