第28章 君に伝えたいこと
暗い暗い闇を超えると、そこはまた闇だった。
暗い、実験施設のようなところで、周りにいた他の人たちもちゃんといた。
闇の奥に、誰かがいるのが見えた。
椅子に縛られていて、首が固定されている、知らない人。
「おいっ!!誰だよアンタら!助けてくれ!縛られてんだよ!!」
「だっ誰ですか!?なっ…いったいなんなんですか!大丈夫ですか!?」
「うるさい。安藤、仕事だ。」
「え…いやっ!」
駆け出そうとすると不意に隣から腕が伸びてきて、がしっと腕を掴まれる。
あの、黒い霧の人だった。
「何するんですか!離してください!」
「すみません、拘束させていただきます。」
抵抗して足を踏んでも全く効かず、無駄な体力消費はやめようと大人しくする。
「なにするんですー?あの人誰ー?」
「そうよこんな埃っぽいところに連れてきて。」
「何するつもりだ死柄木」
「ココサイコーだな!帰らせろよ!!」
口々に発する彼らを前に死柄木さんはニヤニヤと答える。
「安藤の、個性の“実験さ。言ったろ?“コンポーザー”って。」
実験
その言葉に背筋が一気に凍りつき、思考回路に霜が降りる。
脊髄反射で目を閉じて、私は抵抗を再開した。
「ぜっったい!!嫌です!!!」
「はぁ?目ぇ開けろよ。」
目を閉じている先で眼帯が剥ぎ取られたのを肌で感じる。
ダメだ、目を閉じろ。
開けるな。
絶対、開けるな。
「アイツには目を逸らしたら殺すって言ってある。……俺は、知ってるぜ。お前の家も、お前の“大事なモノ”も。“桜木優”とかか?」
耳元で囁かれ、私は思わず目を開いた。
そこからは、もう覚えてない。
闇が溢れて、
それで、
叫び声が聞こえて、
それで、
それ……で……
ごめんなさいおばさん。
私もう、帰れないや。
出久くん、ごめんなさい。
居場所をくれたのに。
おかあ、さん…
わたし、どうしよう。
『こんな個性……敵になるために生まれてきたようなものじゃないか。』
そんな言葉がどこかから聞こえた。
もう、どこにもあの背中は見えないや。