第28章 君に伝えたいこと
「弔くんばっかりずるいデス!!私もひよこちゃんと遊びたい!!」
掴まれていた腕がぐっと後ろに引っ張られたと思うと、あのハツラツとした声が聞こえてくる。
「ひみこちゃん…?」
「は?どういうつもりだよトガ。」
「私たちオトモダチなんですから!!お話したいですー!」
死柄木さんから目線を外し後ろを向けば、むっと頬を膨らませたヒミコちゃんがいた。
確かに正気……っていう感じじゃないけれど、ウソをついているふうにも見えなくて、私の緊張は何故だか少し和らいだ。
「ヒミコちゃん、トモダチって言ってくれて、ありがとう。」
目を見て真剣にそう言うと、ヒミコちゃんはニッコリと笑った。
その笑顔は普通の女の子みたいで。
本当にオトモダチになれるんじゃないかなんて考えが浮かんでしまう。
「……うるさいな安藤。安藤にやらせないといけないことがあんだよ。」
死柄木さんに口を塞がれ、もがぁっと悲鳴をあげる。
「その後なら遊べマス?」
「さぁな。」
「おい死柄木。安藤にやらせることってなんだ。」
もうひとつ声が響いて。
その声はあの冷たい声で、たらりと冷や汗がたれた。
「あぁ?」
「俺達も安藤に用があんだって言ってんだろ。」
「もがっ!」
「「うるせぇな。」」
私の横で繰り広げられる、私に関する口論で、口を塞がれている私は何も言えなかった。
口を塞いだまま、死柄木さんは2人に語りかける。
「……お前らにはこいつの個性言ってないよな。」
「ああ。」
「知らなーい!」
知らない。
そう言われても、今はもう意味が無いような気がして聞き流した。
でも、彼らはつづけた。
「個性なんてカンケーないもん!ワタシはひよこちゃんと一緒にいたいだけだモン!」
「あぁ。コイツの思想に興味があるだけで、個性とかは関係ないな。」
その言葉に、私は目を見開いた。
ずっと言って欲しかった言葉を、彼らに言われてしまった。
ずっと欲しかった言葉をくれたのが、敵だったなんて。
「ここにいてほしーの!!弔くんも一緒でしょ?」
「まぁ。」
目を閉じた。
ぎゅっと、すべてをシャットアウトしたかった。
嬉しい言葉をくれてしまった。
彼らは、大好きな人たちの敵なのに。
それなのに