第28章 君に伝えたいこと
「まぁ…急ぐもんでもないか……。好きにしろ。」
「わぇっ!」
「おっと。」
目を閉じていたら急に拘束が外れ、放り出された。
その先では、あのヤケドだらけの男の人にキャッチされる。
なんなんだ……。私は物か!!
と怒りが再燃して死柄木さんを睨みつける。
彼は私を一瞥もしないでバーカウンターの席に座った。
このっ……!!ムカつく!!
「なん……なんなんですか!!私は物じゃありませんっ!!」
「ふーん。」
ふーんとだけ返した死柄木さんにますます苛立ち、私はその場で地団駄を踏んだ。
むーっと睨みつけたけど、彼はぷいっとそっぽを向く。
「そーですよ!ひよこちゃんはワタシのオトモダチですモン!!」
そう言ってぎゅっと抱きしめてくれたのは、ヒミコちゃん。
その言葉に嬉しくなってしまいそうで、私は胸を押さえつけて目を閉じた。
この場に慣れて、馴染み始めているのが怖かった。
「いっぱいお話聞かせてください!!」
「そこ座れ。」
「その前に髪の毛よ。髪の毛は女の子の命なのに…!!」
「本当のヒーローは髪なんて気にしない!!」
「やだあんたうるさいわね!」
普通、だった。
一緒にいすぎて、マヒ、したのかな。
だってこの人達、悪いひとたちで、それで、
ダメだ。
絆されちゃ。
そんなの裏切りだ…。
でも、今、私から見える彼らは、あまり悪く見えない。普通の会話をしている彼らを見たら、ただの人間なんだって思ったら、もう、攻撃なんて出来るわけなかった。
『ひよこ。』
優とはじめて出会った時、彼は世間では敵って、言われてたな。
小さい妖怪、最悪の詐欺師って。
正義ってなんなのか、正しいってなんなのか、悪いってなんなのか、分からなくなってくる。
この人達と一緒にいるのに恐怖が薄れつつある私がおかしいのかもしれない。
もう、わかんない。
「ひよこちゃん!どうしたの?どうしてしゃがんでるんですか?」
頭を抱えてしゃがみ込めば、ヒミコちゃんは声をかけてくれる。
「分からない…。わかんないんです……アナタ達いったい……なんなんですか…?」
「……。」
何故か震える唇で、私がぽつりぽつりと言うと、
「分かった。話そう。」
その言葉は、誠実だった。