第28章 君に伝えたいこと
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『君、どうしたの?どうして、こんなところにいるの?』
春。
出会いの季節。
河原でひとり寝っ転がっていた小学4年生くらいの少年に、少女は声をかけた。
少年は、こんなところに一人でいる割に小綺麗で、異彩を放っていた。
少女はまだ慣れないセーラー服を翻し、大きな眼帯を付けた顔で笑顔をつくる。
『お父さんとお母さんは?』
しゃがみこんで話しかけてくる少女を彼は選別するような目で眺める。
金を持っているようには到底思えない、ただの中坊だ。
財布だけスってやろう。
彼はそう判断して立ち上がる。そしてそんな考えが自然と湧き上がる自分に吐き気がして、目を閉じた。
『…?きみの名前は?』
『…っる…さいな…!!』
底抜けに優しく、下心なんてまるで無いその声に、彼の計画は破綻した。
せっかく人のいい笑顔を浮かべて、財布だけスってここから離れようと思ったのに。
『どっか行けよ!!関係ないやつが話しかけてくんな!!』
これ以上罪を重ねたくないから。
これ以上誰も傷つけたくないから。
少年は心の底から声を出した。
それなのに少女は、目を大きく開けてそれから一瞬しゅんとして、それでも言葉発した。
『確かに関係ないなぁ…。君のことは分からないし…でも……なんでかな…。分からないからちゃんと分かりたいって、思うよ。』
まっすぐ。
『だからさ、君のこと、聞かせてほしい。』
『は、はぁ?』
『居る場所がないなら、ここがいやなら、』
まっすぐ見上げてくる黒く透き通った瞳に、彼は目を見開いた。
『うちにおいでよ。』
間違えれば誘拐事件にもなりうるそのひとことが。
なんてことないそのひとことが、どうしてかその時、彼に居場所をつくった。
もしも誰かが。
僕に居場所をくれるなら。
そんな言葉をくれるなら、その人のことはそう呼ぼうと、彼は決めていたのだ。
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桜木 優
個性:詐欺師
頭の回転が常人より何千倍も速く、口も上手で、人を騙すことにだけ長けている。上手く制御していないとすぐ人を騙してしまう。詐欺師っぽいことは大概できるので、ハッキングも御手の物。