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夢を叶える方法【ヒロアカ】

第27章 once upon a time




「いただきます!」


カレーはいい匂いがする。

何故だか俺は真ん中で。両脇には普さんとひよこちゃんが。

ふたりは同じ笑顔でカレーを食べる。
ひよこちゃんはにんじんだけ避けた。


「あーひよこ。にんじんさん!」

「だってぇ!」
「にんじんさん寂しいぞぉ、にんじんさんだけ仲間はずれだなぁ。」


裏声をつかってひなたさんは言う。人参の声のイメージだろうか。

するとひよこちゃんは一気に焦った顔になり、


「にんじんさんごめんなさい!ひよことおともだちになって!」

と真剣ににんじんと会話する。

「ボクを食べておくれ!食べてくれたらお友達になれるよ!」


裏声のひなたさんは渾身の演技でひよこちゃんの口ににんじんさんを運ばせることに成功した。


「にんじんさん…おともだちなったけどなぁ…ひよこもうすぐおたんじょうびなのになぁ。」


うぇえと、人参特有の甘さに顔を歪めながらひよこちゃんは呟く。


「え、ひよこちゃん誕生日なんですか?」
「うん。あれ、言ってなかったっけ?5月3日だよ!」
「ほぉ…」
「ひよこ5さいになるんだよ!」


5歳。

この社会では大きな意味を持つ年だ。


「ひよこちゃん…個性は……。」

「まだ、なんだよね…。」


ひよこちゃんは、カレーから目をあげてこちらを見上げた。


「ひよこ、ヒーローになりたいの。おとうさんとかあいざわさんみたいなヒーロー。」


これまで幸せそうな顔をしていたひよこちゃんは、眉を歪めて下を向く。


「こせいなくても、なれるかな…」


その幼く無邪気な問いに、俺は頭を撫でて応える。

応えようとして、口が動かなかった。


“なれる”なんて無責任なこと言えないし


“なれない”なんて言ってこの子に絶望なんて与えたくない。


結果的に頭を撫でているだけの形になって、ひよこちゃんは頭の上に疑問符を浮かべた。


「消太くんは優しいね。」

後ろから聞こえる普さんの声は、いつも通り優しくて、振り返れば少しだけ切なげな顔をした普さんが目に映る。



「ヒーローになるなら、僕はずっと待ってるよ。」


目を細めて、猫っ毛を揺らして


「どんなことがあっても、」


言葉は空気を震わせて、ひよこちゃんの耳へと入る。


「ちゃんとそこに居るからね。」


その言葉に、ひよこちゃんは笑った。


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